

アメリカンシンフォニック
AMERICAN SYMPHONIC ROCK

かつて、70年代のアメリカは、ロックの母国イギリスに比べプログレは不毛の地とされていた。
それでも大御所KANSASの活躍を中心に、アメリカにおけるプログレッシブロックは生き続け、
ややマニアックながら、PAVLOV'S DOG、ETHOS、STAR CASTLE、HAPPY THE MAN、
さらに70年代後半になると、YEZDA ULFA、MIRTHRANDER、CATHEDRAL、NETHER WORLD
などといったバンドたちも、多くは単発ながらもなかなか良質なアルバムを残していった。
SYN-PHONIC、Laser's edgeといったマイナー系プログレレーベルの存在も、
自主制作ものの多いアメリカのプログレシーンにとっては重要な役割を果たしたのである。
90年代に入ると、DREAM THEATERの成功もひとつのきっかけとなり、
MAGNA CARTAレーベルの発足、そこから生まれたMAGELLAN、SHADOW GALLERY、CAIRO
といったハードロック/メタルともリンクするようなバンドたちの存在により、
アメリカにおけるプログレ復興の気配は、マニアックな支持層を中心にして広がって行った。
そして、MASTERMINDやSPOCK'S BEARDといったバンドの登場が
それまではごく少数でしかなかったアメリカのシンフォニックシーンに一石を投じることになる。
ここでもやはりINSIDE OUTというメタル系バンドと重なるレーベルの存在が意味を持つことになる。
やがてPROGFEST、NEARFESTといったプログレ系バンドを中心としたライブイベントも定期的に行われるようになり、
それとともに、キャッチーで独自の抜けの良いメロディをもった、アメリカンシンフォニック系のバンドが次々に現れた。
それらのバンドは、多くはイギリスやイタリアなど、ヨーロッパのバンドの持つ構築性を有しつつ、
耳触りの良い聴きやすさをもった質の高いサウンドを、ややレトロな質感をともなって再現している。
そうして現在では、アメリカは北欧とともにシンフォニック系プログレバンドの密かな宝庫になりつつある。
ここではそうした90年代以降のアメリカンシンフォの傑作アルバムを厳選して紹介する。
緑川 とうせい
王道シンフォニック&プログレハード系



CHRONOMETREE 2000 Amazon.co.jp で詳細を見る SHADOWLANDS 2004 Amazon.co.jp で詳細を見る |
GLASS HAMMER 王道のシンフォニック系バンドとしては恐らく現在アメリカ最高のバンド。 ELPばりの弾きまくりと、叙情重視のハーモニーが絶妙にブレンドし、「危機」の頃のYESをよりコテコテにしたような壮大さが売り。濃密かつ大仰でありつつも、メロディには爽やかなキャッチーさがあるのがポイント。 4th「CHRONOMETREE」はまさに「危機」を思わせる大曲が入った、マニア感涙の傑作。6th「SHADOWLAND」はコーラス隊も配し、壮大なサウンドで盛り上げるバンドの集大成的アルバム。 |
シンフォニック度 ★★★★★ テクニカル度 ★★★ |
IMPOSSIBLE FIGURES 2003 Amazon.co.jp で詳細を見る SYMPHONY FOR A MISANTHROPE 2005 Amazon.co.jp で詳細を見る |
MAGELLAN MAGNA CARTAレーベルからデビューした、アメリカの新世代プログレの象徴的バンド。 Key奏者トレント・ガードナーを中心に、キャッチーなコーラスワークと、耳触りの良いシンフォニックなメロディで聴かせる。 レーベルをINSIDE OUTに移した「IMPOSSIBLE FIGURES」からは、サウンドにプログレハード的なメリハリが加わり、HR系リスナーにもアピールできるアルバムになった。 続く「SYMPHONY FOR A MISANTHROPE」では、さらにシンフォニックな音圧が、厚みを増してせめぎ合う、ドラマティックシンフォの傑作である。 |
シンフォニック度 ★★★★★ テクニカル度 ★★★ |
CONFLICT AND DREAMS 1998 Amazon.co.jp で購入 TIME OF LEGENDS 2001 Amazon.co.jp で購入 |
CAIRO MAGELLAN、SHADOW GALLERYに続くMAGNA CARTAレーベルからデビュー。 1stはあまりにもYES/ELP色が強すぎたが、2nd「CONFLICT AND DREAMS」 は彼らのメロディセンスが爆発した傑作。ハードエッジなアレンジが楽曲をよりドラマティックにしている。 3rd「TIME OF LEGENDS」ではハードな部分を抑え、キャッチーなコーラスワークとしっとりとした美しいキーボードで聴かせてくれる。 70年代の音を巧みに今風のシンフォニックサウンドに融合させたサウントが心地よい。 |
シンフォニック度 ★★★★ テクニカル度 ★★★★ |
![]() Not Everybody's Gold 2000 Amazon.co.jp で詳細を見る ![]() Mimi's Magic Moment 2005 Amazon.co.jp で詳細を見る |
SALEM HILL ハードプログレ的なキレの良さと、KANSASあたりを彷彿させるキャッチーなメロディ。 英国シンフォ的な香りを残しつつも、決してレトロなだけでなく、現代的なアレンジセンスと新鮮味のある曲作りが素晴らしい。 3rd「Not Everybody's Gold」はプログレハード的なノリで聴かせる彼らの最高傑作。 5th「Mimi's Magic Moment」は、NEAL MORSEあたりにも通じる哀愁あるヴォーカルメロディが耳に優しい好作だ。 2nd以降はKANSASのデビッド・ラグズデイルがヴァイオリンで参加していて、艶やかな音色を聴かせてくれる。 |
メロディアス度 ★★★★ テクニカル度 ★★★ |
Momentst of Clarity 2003 Amazon.co.jp で詳細を見る ![]() IN A WORLD 2006 Amazon.co.jp で詳細を見る |
Cryptic Vision キャッチーなプログレハードサウンドで、IT BITESやKANSASあたりを思わせる歌メロがとても耳に心地よい。 デビッド・ラグズデイルをはじめとする、ゲストによるヴァイオリンも美しく、メロディアスさと哀愁の泣きが合わさった楽曲は、自主レベルとは思えない完成度。 2nd「IN A WORLD」ではさらにドラマティック性を増し、NEAL MORSEやTRANSATLANTICあたりに匹敵するレベルまで来た。 今後にますます期待のシンフォニックハードバンド。 |
メロディアス度 ★★★★★ テクニカル度 ★★★ |

The Kindness Of Strangers Amazon.co.jp で詳細を見る X 2000 Amazon.co.jp で詳細を見る |
SPOCK'S BEARD レトロかつポップな感性を現代的な手法で再構築した、このバンドの登場は衝撃だった。 70年代のプログレの質感とビートルズあたりにも通じるキャッチーなメロディをまとった彼らの作品は、3rd「The Kindness Of Strangers」で完成をみた。 よりシンフォニックロックとしてのサウンドにこだわったという印象の「X」はバンドの最高傑作。 メロディ、曲展開のすべてに堂々とした吹っ切れが見られ、バンドの絶頂期はこうあるべきという力強さに溢れている。 その後、中心メンバーのニール・モーズの脱退もあったが、バンドは存続し、今なおクオリティの高い作品を生み出し続けている。 |
シンフォニック度 ★★★★ テクニカル度 ★★★★ |
TESTIMONY 2003 Amazon.co.jp で詳細を見る |
NEAL MORSE スポックス・ビアード脱退後のニール・モーズのソロ1作目。 長大な5つの組曲を連ねたCD2枚組の大作。 自身の歌はもちろん、キーボードワークにおけるやわらかな質感と壮大なシンフォニック性のバランスが見事で、スポビ時代以上に壮麗なシンフォニック傑作。 |
シンフォニック度 ★★★★★ テクニカル度 ★★★★ |
BRIDGE ACROSS FOREVER Amazon.co.jp で詳細を見る |
TRANSATLANTIC THE FLOWER KINGSのロイネ・ストルト、DREAM THEATERのマイク・ポートノイも参加したスーパーバンド。 テクニカルでありながら、ニールのキャッチーなメロディセンスを巧みに配した楽曲は抜群の演奏陣とあいまってじつに聴きやすい。 彼らの残したアルバム2枚は、まさにシンフォニックの理想形を凝縮させた作品だ。 |
シンフォニック度 ★★★★★ テクニカル度 ★★★★ |


THE MUSE AWAKENS 2004 Amazon.co.jp で詳細を見る |
HAPPY THE MAN アメリカ最高のテクニカルプログレバンド、ハッピー・ザ・マンの25年ぶりの新作。 軽やかな変拍子に耳に馴染むメロディを載せ、たたみかけるように展開してゆく様は、往年を彷彿させるサウンド。キット・ワトキンス不在は残念だが、テクニカル・シンフォニックロックというに相応しい濃密作。 |
シンフォニック度 ★★★ テクニカル度 ★★★★★ |
![]() Excelsior! 1998 Amazon.co.jp で詳細を見る |
MASTERMIND 初期は3人編成のスタイルで、完全なELPタイプのサウンドをMIDIギターのみで再現していた彼らだが、正式にKEYにイェンス・ヨハンソンが加入したこの5thでは、テクニカルなジャズロック風味のクオリティの高いインストアルバムとなっている。ややハードめのギターの音や手数の多いドラムと、メタル系リスナーにもリンクするサウンドで、なかなか楽しめる。 |
シンフォニック度 ★★ テクニカル度 ★★★★★ |
Between Cages 1995 Amazon.co.jp で詳細を見る |
A Triggering Myth アメリカのバンドらしからぬシリアスな雰囲気が特徴。シンセメインの楽曲にはクラシカルな美しさと同時に、どこか緊張感がただよう硬質さがある。ミニマルミュージックとしてのテクニカルな質感もあり、チェンバーロック的な冷徹さも感じられる。 |
シンフォニック度 ★★★★ テクニカル度 ★★★★ |
![]() The Origin Consciousness 2005 Amazon.co.jp で詳細を見る |
THE UNDERGROUND RAILROAD シリアスさと硬質な感触を携えたサウンドは、ときにYESばりにメロディアスでありながら、どこかひねくれたアヴァンギャルドなものも感じさせる。メロディにはクラシカルな部分を含みつつも、曲には冷徹な構築性があり、ジャズロックばりの軽やかなテクニックも見せつける。 |
シンフォニック度 ★★★ テクニカル度 ★★★★ |
The Allegory of Light 2003 |
SYZYGY 軽快なリズムの上に、メロディアスなギターとプログレ的なキーボードが重なりつつ、全体的にはアメリカらしい抜けの良さがある。 ややひねくれた感性も覗かせながら、やはりシンフォニックなメロディ心を忘れないでいるところがミソ。組曲構成や大曲も多いが、起伏に富んだ展開で飽きさせない。 |
シンフォニック度 ★★★ テクニカル度 ★★★★ |
Cantus Firmus 2006 |
ADVENT KANSASやKENSOなどを思わせる軽快な抜けの良さがある爽やかなシンフォニックロックで、ところどころメロディには中世音楽色もある。 やわらかなヴォーカルライン、コーラスワークなど、聴きやすくキャッチーな部分と古楽的な格調高さ、しっとりとした質感も併せ持っている。 |
シンフォニック度 ★★★★ テクニカル度 ★★★★ |



| SUFFOCATING THE BLOOM 1992 THE END IS BEAUTIFUL 2005 |
ECHOLYN GENTLE GIANT的なへんくつさと高い演奏技術を持ちながら、単なる技巧のみに走らず、結果として聴きやすいポップセンスを持っているのがアメリカ的。 歌心のあるキャッチーなメロディの裏には、ひねくれた楽曲センスが光っていて、にやりとする。 2nd「SUFFOCATING THE BLOOM」は、そのGG的なテクニカルな要素が存分に楽しめる初期の傑作。 2005年の「THE END IS BEAUTIFUL」では、いっそう自然体のロックとしての演奏を聴かせつつ、くどすぎない程度のテクニカルさをさり気なく加えた、絶品のアレンジセンスが光る。 |
メロディアス度 ★★★★ テクニカル度 ★★★★ |
![]() Amazon.co.jp で詳細を見る THE PARANORMAL HUMIDOR 2001 Amazon.co.jp で詳細を見る |
SOMNAMBULIST クリムゾン的な硬質感と構築性を有しつつ、それらのレトロな要素を再構成したセンスは実に見事。不気味なジャケの1stは、テクニカルでありながらも案外メロディアスで、鳴り響くメロトロンが心地よい。 より曲がこなれた2nd「THE PARANORMAL HUMIDOR」では、GENTLE GIANT的なテクニカルでとぼけた部分に、現代風のヘヴィさとモダンさを加え、キャッチーなメロディラインはSPOCK'S BEARD的でもある。 シンフォニックな音像を失わないまま、独自の現代感覚で彩られた、センス溢れる傑作だ。 |
メロディアス度 ★★★★ テクニカル度 ★★★★ |
![]() I MOVE 2002 Amazon.co.jp で詳細を見る |
IZZ テクニックもあり、メロディアス…だが一筋縄ではいかないというサウンド。 キャッチーなメロディのおかげで、一聴して分かりやすいのだが、その実曲調はコロコロと変わり、案外節操がなく、そのひねくれ方がじつに面白い。 |
メロディアス度 ★★★ テクニカル度 ★★★★ |
「WEEDS」 2005年 |
RING OF MYTH YES風味もあった前作もかなりの傑作だったが、今作ではテクニカルな硬質性を強め、8分、9分という長曲を軸に、センスある展開力と演奏力で聴かせる。もちろんキャッチーなメロディも随所に混ぜているので、複雑であっても聴き疲れはしないし、リズム面での流れるような変化は見事で、変態ちっくなノリをさらりと混ぜこんでいてにやりとする。 |
メロディアス度 ★★★★ テクニカル度 ★★★★ |
![]() August in the Urals 2006 |
Deluge Grander メロウでありながら涼しげな感触は、アメリカというよりもむしろ北欧のバンドを思わせる。と、思っていると、どことなくヒネた曲展開はGENTLE GIANTなどからの影響も感じさせ、メロディアスなのだが、曲調にはミステリアスな風味が加わって面白い。注目の新人。 |
メロディアス度 ★★★ テクニカル度 ★★★★ |