プログレCDレビュー 
PROGRESSIVE ROCK CD REVIEW 2017 by 緑川 とうせい

★2017年に聴いたプログレ(フォーク/トラッド・その他含む)CDレビュー
*過去のレビューは■CDレビューTOPから各ジャンル別に見られます

*メタル最新レビュー *注目の新譜コーナー


3/5
ひな祭りはアヴァンプログレ&ジャズロック!(57)


BENT KNEE 「Say So」
アメリカのアヴァンロック、ベント・ニーの2016年作
やわらかな女性ヴォーカルの歌声を乗せた、エモーショナルロック的でもある聴き心地に、
Kate Bush的なシアトリカルな雰囲気と、エキセントリックなセンスを含ませたというサウンド。
ヴァイオリンなどのストリングスアレンジを含む優雅な感触に、チェンバーロック風味を感じさせるスリリングさと、
キュートなキャッチーさが合わさった作風で、結果、プログレとしても十分に楽しめる面白さがある。
シンセ奏者でもあるコートニー嬢の表現豊かで伸びやかな歌声が大きな魅力となっていて、
ときにアヴァンギャルドな展開も見せながら、この包み込む歌声ですべてをソフトにしているという。
レーベルがCUNEIFORMというのもうなずける、ポップ系・チェンバー・アヴァンロックの好作品。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Nerve Institute「Fictions」
アメリカのアヴァン・プログレ、ナーヴ・インスティチュートの2015年作
マルチミュージシャン、マイケル・S・ジャッジによるソロユニットで、本作がすでに3作目となる。
ヴォーカルも含めてすべての楽器を一人で演奏、軽妙なアンサンブルに屈折感のある薄暗さと
フランク・ザッパなどを思わせるアヴァンギャルドなセンスを盛り込んだ、一筋縄ではいかない作風。
Deluge Granderあたりに通じるミステリアスな空気感に、適度にモダンなポップ感触が加わった聴き心地は
ディープなプログレ者の耳を大いに楽しませてくれる。とぼけた味わいと倦怠の翳りが合わさった異色の力作。
White Willowのヤコブ・ホルム・ルポが、ギターとシンセで1曲ずつゲスト参加している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 屈折度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Loomings 「Everyday Mythology」
フランスのアヴァン・チェンバーロック、ルーミングスの2015年作
YUGEN、EMPTY DAYS、NOT A GOOD SIGN、FACTOR BURZACOなどにも参加するミュージシャン、
Jacopo Costaを中心にしたバンドで、ヴィブラフォンの優雅な音色に、エフェクトのかかった男ヴォーカルに
美しい女性ヴォーカルが絡み、フランスらしいエキセントリックな妖しさと軽妙なアンサンブルで聴かせる。
ミステリアスな静寂感と先の読めない展開も面白く、ときにシアトリカルな演劇性も匂わせながら、
軽やかなユーモアを含んだ聴き心地は、適度にダークながらも重すぎず、さほど難解な感じもしない。
女性ヴォーカルが前に出る部分が多いので、異色のアヴァンロックながらも、全体的には優雅な印象だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


RHUN 「Fanfare Du Chaos」
フランスのプログレ・ジャズロック、ルーンの2013年作/邦題「混沌のファンファーレ」
サックスが鳴り響き、コバイヤ語を思わせる男女コーラスの歌声を乗せた、まさにMAGMAタイプのサウンド。
サックス、クラリネット、バスーン、フルートなどがチェンバーロック的にときに優雅にときにシリアスに吹き鳴らされ、
変則リズムを含んだテクニカルなアンサンブルとともに、アヴァンギャルドな展開を大仰に描いてゆく。
特徴としてはノイジーなギターによる不協的な緊迫感が、スリリングな危うさをかもしだしていて、
フルートなどが美しいゆったりとしたパートとの強烈なコントラストとなっている。暴れん坊のマグマというか、
むしろシアトリカルな妖しさでは、本家マグマを凌駕するかもしれない。これは強力なアルバムだ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 マグマ度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


PEARLS OF SWINES
フランスのアヴァンプログレ、パールス・オブ・スウィネスの2013年作
エドガー・アラン・ポーの詩をコンセプトにした作品で、変則リズムを含むアンサンブルに、
女性ヴォーカルの歌声を乗せ、浮遊感のあるアヴァンギャルド性で聴かせるサウンド。
適度なテクニカル性とともに、チェンバーロック的でもあるミステリアスで不穏な空気感も描き出し、
手数の多いドラムやダークなフレージングを奏でるギタリストのセンスもなかなかのもの。
曲によってはHenly Cow的なキュートな毒気や、フランスらしい優雅な闇を感じさせつつ、
全体的にはまだ実力を出し切っていないような、得体の知れないセンスも匂わせる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Jean-Paul Prat 「MASAL」
フランスのミュージシャン、ジャンポール・プラットのソロ。1982年作
MAGMAに影響を受け70年代より活躍するマルチミュージシャンで、本作は42分の大曲を中心にした大胆な構成。
手数の多いドラムに、わりとハードなギター、サックス、トランペット、ホルン、フルートといった管楽器が絡んで、
いかにも怪しげで大仰なジャズロックを描いてゆく。まさにMAGMAを思わせるダークな世界観と重厚な演奏で、
プラット氏のドラムもクリスチャン・ヴァンデ並みに叩きまくっている。優雅なピアノが響くゆったりとしたパートから、
ときに3本のギターが重なり、ブラスセクションを加えたぶ厚いアンサンブルで、ダイナミックに構築されるサウンドは圧巻だ。
MAGMAファンならずとも圧倒されるスケール感に包まれた異色の力作である。CD化に際し、1985年に録音された15分、9分の大曲と、
1990年録音の2曲をボーナストラックとして追加されている。こちらは、もう少しソフトなプログレジャズロックである。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 重厚度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

MASAL 「GALGAL」
フランスのプログレ・ジャズロック、マサルの2010年作
1984年にソロ作「MASAL」を発表したマルチミュージシャンJean-Paul Pratを中心とするユニットで、
サウンドの方はかつてのようなMAGMA直系のスタイルではなく、優雅なピアノの旋律にギターが絡み、
モダンなテクニカル性を軽妙に聴かせる、プログレッシブなジャズロック。軽やかにサックスが鳴り響き、
そこにギターのフレーズがメロディックにかぶさる、フュージョン的でもある爽快な感触に
プログレらしいエキセントリックな切り返しやリズムチェンジなどのアレンジもなかなか楽しい。
どことなく、PEKKAあたりを思わせるユーモアを感じさせる大人のアンサンブルも含めて、
成熟したミュージシャンのみが作れる知的なプログレ・ジャズロック作品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 軽妙度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Debora Seffer
フランスのヴァイオリニスト、デボラ・セファーの2004年作
ZAOなどに参加したYochk'o Sefferの娘で、自身のキュートなフランス語の歌声を乗せ、
艶やかなヴァイオリンを弾きならす、コケティッシュなジャズロックサウンドを聴かせる。
父親譲りの優雅で軽妙な楽曲センスも覗かせつつ、女性らしいきらびやかなポップ感も併せ持ち、
プログレ寄りの構築性というよりは、センシティブな軽やかさで、お洒落な香りを漂わせている。
楽曲は3~4分台で、わりとコンパクト。もう少し濃密な感じだとよりプログレリスナーに受けると思う。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅で軽妙度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る



Kundalini Shakti Devi
イタリアのプログレバンド、カンダリニ・シャクティ・デヴィの1974年作
1974年に録音されながらも、未発のまま終わったバンドの音源が、2013年にCD化。
19分、14分、13分という大曲3曲という構成で、やわらかなフルートが鳴り響き、
イタリア語のヴォーカルを乗せた、湿り気のある叙情性を含んだサウンド。
ギターはわりと控えめながら、ときにブルージーなフレーズを聴かせ、
軽やかなアンサンブルを生み出すドラムにオルガンが重なり、ときにサックスも鳴り響く
ジャズロック的な軽妙さと、おおらかなメロディアス性が合わさったという感触だ。
これというインパクトはないのだが、当時のイタリアンロックの奥深さが窺える好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 軽妙で繊細度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Dialeto 「The Last Tribe」
ブラジルのプログレ・ジャズロック、ディアレトの2013年作
トリオによるインストバンドで、メロウなギターフレーズを乗せた優雅なアンサンブルで、
随所にツインギターを乗せた適度なヘヴィさも含んだサウンドを聴かせる。
プログレ的な展開はあまりなく、ハードフュージョン寄りのギターインストといった趣で、
テクニカルな面白さもさほどなく、メロディのフックという点でも、やや中途半端な内容。
こういうインスト作品を飽きさせずに聴かせるには大変なセンスと技術が必要なので、
もう少し楽曲の魅力を上げるか、演奏のセンスを磨いていってもらいたい。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・6 総合・・6
Amazon.co.jpで詳細を見る


Media Banda「Dinero Y Terminacion Nerviosa」
チリのチェンバー・ジャズロック、メディア・バンダの2008年作
FULANOのサックス奏者と女性Voを中心に結成されたバンドで、本作は2作目となる。
「金と神経質な完成」と題されたCD2枚組の大作で、軽妙なアンサンブルにサックスが鳴り響き、
オルガンやエレピを含むシンセにキュートな女性ヴォーカルの歌声を乗せたキャッチーな感触と、
テクニカルなジャズロック風味が合わさったスタイル。ザッパ的でもあるアヴンギャルドな感触を優雅に溶け込ませつつ、
あくまで軽やかな聴き心地は、カンタベリー系のジャズロック的でもある。エキセントリックなセンスを覗かせながら、
南米のバンドらしいやわらかな聴き心地が特徴的。優雅なアヴァンロックであり、女性声ジャズロックとしても楽しめる傑作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で軽妙度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Stripsearch
アメリカのアヴァン・ジャズロック、ストリプサーチの2003年作
ギター、ベース、ドラム、サックスという4人編成で、わりとハード寄りのギターにサックスが鳴り響き、
ドラムはドスンドスンと重ためのリズムを叩き出す。フリーキーでアヴァンギャルドな異色のジャズロック。
オールインストで7分前後の長めの曲も多いので、ときにフリーキーすぎてダレる感じもあるのだが、
ノイジーなギターに奔放なサックスの暴れっぷりが耳を引き、手数の多いドラムはテクニックもあるので、
崩壊しそうなところを緊張感あるアンサンブルで保っているという。楽曲というよりはほぼ即興的な演奏で
無理やり曲にしたというところが面白いと思えるかどうか。レーベルは何故かMagna Cartaなんですね。
ドラマティック度・・5 アヴァンギャル度・・8 フリーキー度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Michael Riessler「HONIG UND ASCHE -HONEY AND ASH」
ドイツ出身のサックス&クラリネット奏者、ミヒャエル・リースラーの1998年作
L'Orchestre National de Jazz Parisにも参加していたミュージシャンで、本作はエキセントリックな女性声を乗せた
チェンバーロック的な怪しさに包まれた作風で、変則リズムまくりの緊張感の中を、クラリネットやトロンボーン、
トランペットなどが吹き鳴らされる。恐ろしくアヴァンギャルドなジャズロックなのだが、先の読めないスリリングな空気感と
得体の知れないダークなチェンバーロックが交差して、結果としてこれは…とてもプログレだろうという聴き心地なので、
MAGMAなどが好きな方にも対応。ドラムが躍動する激しいジャズロック感触に、ときにアコーディオンやヴァイオリンも加わった
一種、土着的な感触も覗かせつつ、トランペットが盛大に鳴り響き、女性ヴォーカルがフランス語の声を妖しく乗せる、
じつにアヴァンギャルドかつダイナミックな演奏が繰り広げられる。ううむ…コレはもの凄い作品ですね。
プログレ度・・8 スリリング度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

YAHOWHA 13 「I'm Gonna Take You Home」
アメリカのカルト教団、ヤホワ13の音楽作品。1974年作
1960年代カルフォルニアで誕生した宗教団体で、教祖である、ファーザー・ヨッドを中心に菜食や動物愛護、
反戦および愛と平和を説き、音楽活動も熱心に行っていたという。70年代半ばに、ファーザーの事故死によって
教団は解散状態となるが、彼らの残した音楽作品はCD化され、密かに世に出回ることとなった。
そのサウンドは、ヨレ気味のギターにジェントルでヘタウマなヴォーカルを乗せた、まさしくカルトなサイケロックで、
妖しさぷんぷん。ドラムが入ってのダイナミクスと、詠唱めいた歌声とともに、恍惚として盛り上がるところは、
秘教系サイケの王道というべきか。しかし、これが案外に楽しめる。15分を超える大曲を含む力作なのです。
もっと気になる方は、13枚組のボックスセット(日本盤!)をどうぞ。
ドラマティック度・・7 サイケ度・・9 カルト度・・10 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



2/11
プログレも忘れていませんよ(43)


Kaipa Da Capo 「Darskapens Monotoni」
スウェーデンのプログレバンド、カイパ・ダ・カーポの2016年作
復活KAIPAとは別に、ロイネ・ストルトが70年代の古き良きサウンドを再現するべく、オリジナルメンバーである、
トーマス・エリクソン、インジマー・ベルグマンとともに立ち上げたバンドで、ロイネの弟、マイケル・ストルトも参加。
サウンドは、ロイネのメロウなギターの旋律をたっぷりとまぶし、美しいシンセワークで包み込んだ、
かつてのKAIPAの素朴さに、初期のThe Flower Kingsを合わせたような、叙情豊かなシンフォニックロック。
大人の哀愁を感じさせる、マイケル・ストルトのどっしりとした歌声に、オルガンが鳴り響く70年代風味のやわらかさ、
そして繊細かつ優美なギターワークとともに、これぞ往年の北欧ロックという味わいが楽しめる。
10分を超える大曲も多数で、派手な展開や新鮮味は薄いもののじっくりと鑑賞できる。さすがの傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

KAIPA 「Nattdjurstid」
スウェーデンのプログレバンド、カイパの1982年作
プログレ、シンフォニックロックとして楽しめるのはロイネ・ストルトが在籍した3作目までなのだが、
2015年になって初期3作のリマスター再発にともない、幻の4作目、5作目もCD化された。
5作目となる本作は、ハンス・ルンディンによるきらびやかなシンセワークを前に出し、
80年代的なビート感とキャッチーなポップ性に包まれたサウンドである。
ヴォーカルは基本母国語なので、辺境感を含んだ感触が面白い味わいになっていて、
さほどプログレらしさを求めなければ、モダンなプログレハード的にも楽しめる。
アルバムとしては人気が出なかったのか、本作を最後にバンドは解散となる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・6 北欧度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

VAN der GRAAF GENERATOR 「Merlin Atmos - Live Performances 2013」
イギリスのプログレバンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターのライブ作品。2015年作
60年代から活動する英国プログレの裏の帝王というべきバンド、2005年の復活以後は精力的にアルバムやライブ作品を発表、
本作は、2013年の欧州ツアーからのステージを収録。ピーター・ハミルの深みのある歌声に、ヒュー・バントンのオルガン、
ガイ・エヴァンスのドラムによって生み出される湿り気を帯びたサウンドは、まさにVdGGにしかなしえぬ世界観。
トリオ編成ながら、ときにツインシンセになったり、ハミルのギターや、ヒュー・バントンのベースペダルによって、
楽曲ごとに巧みに編成を変化させるメンバーシップもさすが。70年代の空気感を再現させながらスリリングな緊張感を描く、
ベテランらしい堂々たる表現力も素晴らしい。それぞれ20分を超える大曲“Flight”、“A Plague of Lighthouse Keepers”を
完全な形で再現しているのもファンには嬉しいだろう。2CDの限定盤は、Disc2に7曲を70分超を収録、まさに完全版ライブが楽しめる。
プログレ度・・8 ライブ演奏・・8 スリリング度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

KIAMA 「Sign of IV」
イギリスのプログレハードロック、キアマの2016年作
MAGENTAのロブ・リードを中心に、FROST*のアンディ・エドワーズをドラムに、ギターにはルーク・マシンが参加
THE REASONINGのディラン・トンプソンをリードヴォーカルに据えた編成で、70年代ルーツの古き良きロック感触と
シンフォニックなプログレ性をほどよくブレンドしたという作風。いうなれば、レッド・ツェッペリン的な英国ハードロックを
オルガンなどを含む美しいシンセとともに、プログレファン向けに構築したという聴き心地である
随所に聴かせるルーク・マシンのテクニカルなギタープレイや、ロブ・リードの美麗なシンセアレンジもさすがで、
しっとりとした叙情的なバラード曲などはシンフォニックロック的にも楽しめる。大人の味わいに包まれた力作。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 英国ロック度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Liam Davison 「Treasure of Well Set Jewels」
イギリスのミュージシャン、リアン・ダヴィソンの2011年作
Mostly Autumnのギタリストでもあるミュージシャンで、グラムロック調のナンバーから、素朴なシンフォニックロック、
アンビエントなナンバーまで、自身のヴォーカルを乗せ、メロウなギターワークとともに、じっくりと聴かせる作風だ。
イアイン・ジェニングス、アン・マリー・ヘルダー、ヘザー・フィンドレイといった、Mostly Autumn関連のメンバーが参加。
女性ヴォーカルを含むナンバーは、やはりモストリー・オータムに通じる雰囲気もあり、浮遊感ある叙情が味わえ、
翳りを含んだモダンなポストプログレ風のナンバーなど、Pink Floydルーツの薄暗系ロックとしても楽しめる。
ラストの8分を超えるナンバーでは、ギルモアばりの叙情豊かなギターの旋律が心地よく響き渡る。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 薄暗度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


ARK 「Wild Untamed Imaginings」
イギリスのプログレバンド、アークの2011年作
80年代に結成、元IQのBを含むメンバー編成で、90年代まで活動していたバンドの復活作。
オルガンやムーグシンセが鳴り響き、ハード寄りのギターと枯れた味わいのヴォーカルで聴かせる、
シンフォニックなプログレハードというサウンド。楽曲自体はASIAや中期のYesIT BITESなどを思わせる
キャッチーなメロディアス性でとても聴きやすく、やわらかなフルートの音色が入った繊細な叙情性もよいですね。
ただ、いかんせんヴォーカルのウェットンを下手にしたようなオッサン臭い声が好みを分けるところかもしれない。
音作り的にも90年代の延長という感触で、いくぶんB級がかった英国のプログレハードがお好きならどうぞ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 古き良きプログレハー度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


CREDO 「This is What We Do」
イギリスのシンフォニックロック、クレドのライブ作品。2009年作
90年代に結成され、2005年に復活作を発表したバンドの2008年のポーランド公演を2CDに収録。
きらびやかなシンセワークにメロウなギターとマイルドなヴォーカルを乗せた
PENDRAGONARENAなどに通じる英国らしい正統派のシンフォニックロックサウンド。
10分を超えるナンバーも多く、ポンプロックルーツの湿り気のある叙情性とともにメロウに聴かせる作風は、
これという新鮮味はないものの、ポーランドのSatelliteなどにも通じる翳りを含んだ繊細な味わいが楽しめる。
演奏自体も安定していて、IQなどを思わせるシアトリカルなヴォーカルの表現力もなかなかのもの。
さすがに2CDで100分を超えるという長尺感もあるのだが、音質も良く安心して聴けるライブ作品ではある。
シンフォニック度・・8 ライブ演奏・・8 メロウな叙情度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

21st Century Schizoid Band 「Live in Japan」
キング・クリムゾンのトリビュートバンド、21st・センチュリー・スキッツォイド・バンドのライブ音源。2003年作
マイケル・ジャイルズ、イアン・マクドナルド、メル・コリンズ、ピーター・ジャイルズ、ジャコ・ジャクジクというメンツによる
2002年の来日公演のステージを収録。叙情的なイントロに続き、ツインサックスが鳴り響く“A Man,A City”から、
いかにもファンが求めるクリムゾンらしさが炸裂。ジャコジクの歌声は、どことなくかつてのグレッグ・レイクを思わせ、
マイケル・ジャイルズのドラムは、とくにジャズ風味の強いナンバーは絶品で、軽やかなアンサンブルの核を担っている。
マイケル自身のソロからのナンバー“Progress”も披露。1stの定番曲、“クリムゾン・キングの宮殿”、“エピタフ”
さらには、マクドナルド&ジャイルズからのナンバー“BirdMan”なども聴きどころ。ラストはお約束の“21世紀の精神異常者”で、
往年のクリムゾンファンは大満足の内容だろう。日本盤にはDVDも付属していて、CDより2曲多い14曲のライブ映像が楽しめる。
ドラマティック度・・8 ライブ演奏・・8 往年のクリムゾン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Ellesmere 「Les Chateaux De La Loire」
イタリアのシンフォニックロック、エレスメーレの2015年作
TAPROBANのRoberto Vitelliによる プロジェクトバンドで、フランスのロワール渓谷周辺の古城をテーマにしたコンセプト作。
美しいシンセにアコースティックギター、やわらかなフルートの音色で、しっとりと聴かせる牧歌的なサウンド。
優美でシンフォニックなアレンジと、アコースティックで素朴な味わいが合わさったインストを中心にした楽曲は、
涼やかな風やあたたかな日差しを感じさせ、中世の空気感を描くような幻想的な味わいも楽しめる。
ドラムやエレキギターが入らないので、プログレ、ロック色は薄いものの、Anthony Phillipsなどに通じる、
繊細な美意識にうっとりと浸れる。ゲストにはそのアンソニー・フィリップスに、ジョン・ハケット、
Racomandata Ricevuta Ritornoのルシアノ・レゴーリ、RanestRaneのダニエレ・ポモが参加している。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優美度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Daal 「Destruktive Actions Affect」
イタリアのプログレユニット、ダールの2011年作
TILION、COLOSSUS PROJECTのシンセ奏者と、NUOVA ERA、TAPROBANのドラマーの2人組。
SF映画を思わせるSEのイントロから、曲が始まると手数の多いドラムにメロトロンやムーグを含むシンセを乗せ、、
イタリアらしいホラーサントラ的でもあるダークでミステリアスなインストサウンドを展開する。
プログレ的な濃密さよりは、ストーリほにそって描かれるサントラ風味の作風なので、物足りなさはあるが、
16分の大曲では、ヴァイオリンが鳴り響きやわらかなピアノを含んだクラシカルな優雅さが前に出てくる。
ゴブリンやモルト・マカブルなど、ホラーサントラ系のプログレが好きな方なら、わりと楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Klotet 「Det Har Aldrig Hant Och Kommer Aldring Handa Igen」
スウェーデンのプログレバンド、クロテットの2010年作
前作はなかなか強力な、サムラばりのおちゃらけ系アヴァン・ジャズロックであったが本作はさらにエスカレート。
女性シンセ奏者を含む4人編成で、いきなりメタルばりの激しい疾走が始まったかと思いきや、
ヘンタイ気味の唐突な展開と、とぼけたユーモアを散りばめた、無茶な楽曲に唖然とさせられる。
楽曲は2~3分前後が中心で、オルガン鳴り響くオールドなロック感触とテクニカルなアンサンブルによる
ジャズロック色も含んだインストサウンドで、理解不能なセンスはHoyry-Koneなどに通じるものがあるが、
一方ではわりとキャッチーなナンバーなどもあって、適度な脱力感とユルさも味わいとなっている。
捉えどころのなさが魅力ではあるが、個人的にはもっと徹底的にヘンタイ化してもらいたい気もする。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Lunatic Soul 「Impressions」
ポーランドのポストプログレ、ルナティック・ソウルの2011年作
Rivesideのリーダーであるマリウス・デューダのソロプロジェクトで、3作目となる本作は
おそらくタイトルのように習作集で、過去2作を制作した間の未発音源かと思われる。
エレクトロなリズムプログラミングに、シンセやギターを重ねたアンビエントな作風はBrian Eno的で、
シンプルなフレーズをリフレインさせながら、じっくりと内的な叙情を描いてゆくというサウンドだ。
曲によってはわりとギターを中心にしたところもあって、静謐感の中にロック要素を程よく残している。
ほぼオールインストなので、どうしてもBGMになってしまいがちであるが、
マリアス氏のファンであれば彼の音楽センスの一端をしっかりと感じ取れる作品であると思う。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・7 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

TELERGY 「The Legend of Goody Cole」
アメリカのシンフォニックロック、テレルジィの2013年作
ギター、ベース、シンセ、ヴァイオリン、フルートなどを一人でこなすマルチミュージシャン、Robert McClungによるプロジェクトで、
彼の出身地であるニューハンプシャーで16世紀に実在し、魔女裁判にかけられた女性「Goody Cole」の伝説を描いたコンセプト作。
ヴァイオリンが鳴り響き、美麗なシンセアレンジにハード寄りのギターを乗せて、重厚なインストパートを描きつつ、
曲間にセリフやSEを織り込んだ物語的な流れとともに、ドラマティックなハード・シンフォニックロックを聴かせてくれる。
TWISTED SISTERのディー・スナイダー、KING'S Xのタイ・テイバー、WHITE SNAKEのジョエル・ホークストラ
MAGELLANのトレント・ガードナー、PORCUPINE TREEのコリン・エドウィン、SPOCK'S BAERDのリョウ・オクモト、
元HAWKWINDのニック・ターナー、DELUSION SQUAREDのエマニュエル・デル・セイント・ミーンなどがゲスト参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 重厚度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



1/28
1月もあっという間に過ぎ(30)


Universal Totem Orchestra 「Mathematical Mother」
イタリアのプログレバンド、ユニバーサル・トーテム・オーケストラの2017年作
Runaway Totemのメンバーを中心に1998年結成、本作はUTOとして2006年作以来となる3作目のアルバム。
女性Vo、サックス、シンセ奏者を含む6人編成で、変則リズムのテクニカル性を含んだ軽やかなアンサンブルに、
イタリア語の美声の女性ヴォーカルを乗せた、ジャズロック風味を含んだ優雅なプログレサウンド。
メロディックなギターの旋律にクラシカルなピアノとAna Torrs嬢のオペラティックな歌声でしっとりと聴かせるパートから、
リズムチェンジや唐突な展開でアヴァンギャルドな展開を垣間見せる、アーティスティックなアレンジも面白い。
ときにMAGMAを思わせるような部分もあり、ズール系と言われるように、シアトリカルな妖しさを含みながら、
スタイリッシュで軽妙な味わいが特徴的だ。ジャズやチェンバーロック、クラシックの要素を、現代的なセンスと
構築性で仕立て上げた力作。芸術的なジャケデザインは、Il Segno Del Comandoなども手掛けたダニーロ・カプーア氏によるもの。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

La Fabbrica Dell'Assoluto 「1984:L'Ultimo Uomo D'Europa」
イタリアのプログレバンド、ラ・ファブリカ・デル・アソルトの2015年作
ジョージ・オーウェルの小説「1984」をテーマにしたコンセプト作で、オルガンやムーグシンセが鳴り響き、
わりとハード寄りのギターとともに、70年代イタリアンプログレの混沌とした濃密さを蘇らせたようなサウンド。
かき鳴らされるハモンドのくぐもった音色にミニムーグ、メロトロンと、ヴィンテージなこだわりを感じさせる鍵盤に、
伸びやかなイタリア語の歌声が重なり、かつてのイルバレばりの聴き心地に思わずニヤニヤとしてしまう。
組曲のように小曲が次々に連なってゆく構成なので、一曲ごとの味わいはやや物足りないところもあるのだが、
後半には12分を超える大曲では、じっくりと聴かせる叙情パートも含んだ、ドラマティックな仕上がりとなっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Wicked Minds 「Visioni, Deliri E Illusioni」
イタリアのヴィンテージ・ロック、ウィックド・マインズの2011年作
本作は70年代のイタリアンプログレのカヴァーアルバムで、THE TRIP、OSANNA、IL BALLETTO DI BRONZO、
DELIRIUM、NEW TROLLS、LE ORME、NUOVA IDEA、CIRCUS 2000、MUSEO ROSENBACH、QUELLA VECCHIA LOCANDA、
P.F.M.といったバンドの楽曲を全13曲収録。オルガンやメロトロンが鳴り響き、ややハード寄りのギターとともに、
往年のアナログな空気感まで再現したサウンドで、OSANNAのLino Vairetti、DELIRIUMのMartin Gurice、
LE ORMEのAldo Tagliapietra、MUSEO ROSENBACHのStefano Gualifiがそれぞれ自分のバンド曲でゲスト参加、
さらにはJACULAのAntonio Bartoccetti、PRESENCEのSophya Bacciniなども参加。女性ヴォーカル入りのイルバレやPFMは新鮮だし、
やはり本人が歌うオザンナやムゼオはじつに雰囲気がある。イタリアンロック好きは必聴の内容です。
プログレ度・・8 カヴァー度・・9 イタリア度・・10 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Alessandro Farinella 「Road to Damascus」
イタリアのシンセ奏者、アレッサンドロ・ファリネーラのソロ作。2012年作
かつてTale Cueなどで活躍したミュージシャンで、本作は十字軍遠征をテーマにしたコンセプトアルバム。
メロディックなギターワークにピアノなどを含んだ優雅なシンセとオーケストラルなアレンジで、
やわらかな叙情性と起伏に富んだ展開で、ドラマティックに描かれるシンフォニックロックサウンド。
自身によるヴォーカルはやや素人臭いのだが、インストパートのメロディセンスと展開力は、
ときにRick Wakemanあたりを思わせる。ムーグシンセが鳴り響く古き良きプログレらしさもよろしい。
ドラムにはPFMのツアーメンバーでもある、Roberto Gualdiが参加している。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 優美な叙情度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


VENEGONI & CO.「RUMORE ROSSO VIVO」
イタリアのジャズロック、ヴェネゴーニ&カンパニーのライブ。2004年作
ARTI E MESTIERIのルイジ・ヴェネゴーニを中心にしたバンドで、本作は1978、79年の未発表ライヴ音源のCD化。
わりとハード寄りのギターを乗せて、手数の多いドラムとともに躍動感あるアンサンブルで聴かせる、
パワフルなジャズロックが展開される。ヴェネゴーニのギタープレイは、ときにブルージーでときにテクニカル、
ジャズロックでありながらも、むしろロック的な荒々しさを兼ねそろえたノリの良さを感じさせる。
アルティほどの華やかさはないが、ときにアレアのような即興的な演奏もまじえた演奏が楽しめる。
音質はややラフなのだが、その分当時の臨場感ある空気が伝わってくる、価値ある発掘ライブ音源だ。
ジャズロック度・・8 ライブ演奏・・8 音質・・7 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Runaway Totem 「Tep Zepi」
イタリアのハードプログレ、ランナウェイ・トーテムの2002年作
80年代から活動するキャリアのあるバンドで、うっすらとしたシンセに朗々としたヴォーカルを乗せ
秘術的な妖しい気配を漂わせたカルトな世界観。ハードめのギターにオルガンなどのシンセと
イタリア語によるオペラティックな男性ヴォーカルの歌声が重なるなかなか濃密な味わいで、
イタリアらしい大仰なサウンドが楽しめる。インストパートではプログレらしい展開力も覗かせ、
11分の大曲や3パートに分かれた17分の組曲など、本作はよりドラマティックな仕上がりである。
妖しく耽美な世界観に包まれた、いわば「ハードになったJACULA」という雰囲気の力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 カルトで大仰度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


AMAROK 「Hayat Yolunda」
スペインのプログレ・トラッドロック、アマロックの2015年作
1994年にデビュー、優雅なトラッドロックとプログレを絶妙に融合させたサウンドで、
これまでに7枚のアルバムを発表、2009年のリミックス作、2011年のライブを最後に解散したかと思われていたが
本作はアルバムとしては2007年以来となる復活作。アコースティックギターのつまびきに、やわらかなフルートの音色、
スペイン語による美しい女性ヴォーカルの歌声を乗せたサウンドは繊細にして優美。うるさすぎないシンセにピアノ、
シンフォニックロックの美麗な感触と、ロックとしての躍動感が絶妙に合わさった、まさにこのバンドでしかなしえないサウンドだ。
オルガンの音色が加わるととたんにプログレ色が強くなるが、一方ではアコースティカルな素朴さもしっかりと残していて、
「カタルーニャの宝石」と謳われる優雅な美意識に包まれた空気感にはうっとりとなること請け合いだ。哀愁と情熱を兼ねそろえた
マルタ嬢の歌唱の表現力も素晴らしい。これぞトラッドプログレの大傑作。ボーナスDiscには未発音源を収録。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細で優雅度・・10 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

KORMORAN 「MAGYAR KETTOS」
ハンガリーのトラッドロック、コルモランの2010年作
1984年にデビュー、トラッドとロックを融合させたダイナミックなサウンドで、多数のアルバムを作り続けている。
本作は、のっけからいつになくメタリックなギターによるハードな感触に、ヴァイオリンやフルートの音色が重なり
男女ヴォーカルの母国語の歌声を乗せた、トラッド・ハードロックというべきサウンドが広がってゆく。
随所にフォーキー土着性を含んだメロディと、ロックとしての躍動感が絶妙に合わさり、言語を除けば、
むしろ堂々たるメジャー感すら漂わせる聴き心地である。雄大なまでの叙情性と奇跡的なキャッチーな感触で、
細やかなアレンジの質の高さで構築された楽曲は、ドラマティックな美意識とともにロックオペラのような華麗さである。
ドラマティック度・・8 壮大度・・9 トラッドロック度・・8 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Neo-Prophet 「Monsters」
ベルギーのプログレバンド、ネオ・プロフェットの2008年作
美しいシンセアレンジに抜けのいいヴォーカルを乗せて、キャッチーなメロディアス性で聴かせるサウンド。
Neal MorseTRANSATLANTICなど、アメリカ系のバンドにも近い爽快なシンフォニックハードで、
ピアノやオルガン、ムーグなどの古き良きプログレ感触も耳心地よく、メリハリのある展開もなかなかのもの。
ラストは20分を超える組曲で、メロディックな叙情を含ませながら適度なハードさとともに、ドラマティックに構築してゆく。
演奏、楽曲ともどもマイナー臭さはほとんどなく、無名の存在にしておくには惜しいレベルのクオリティだ。
2015年作「T.I.M.E.」はさらなる成長を遂げた傑作なので、そちらもチェックすべし!
メロディック度・・8 プログレ度・・8 キャッチー度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


RJALZ 「U Rigiru」
フランス、コルシカ島出身のプログレバンド、リアルズの2008年作
「コルシカのマグマ」とも呼ばれ1978年に1000枚のみのプレスでLPが出回っていたレアな音源がCD化された。
オルガンやピアノの音色にヴァイオリンが鳴り響き、優雅で軽やかなアンサンブルを聴かせるサウンドで、
基本はジャズロックでありながらも、どこか辺境的な妖しさと湿り気を含んだ土着的な空気感が特徴的。
フランス語による男性ヴォーカルはときに詠唱のようで、女性声のスキャットとともに神秘的な雰囲気を描いている。
16分、11分という大曲を、ときに即興的な演奏を含んだセンスも面白く、MAGMAの妖しさにTerpandreの優雅さを合わせた、
濃密なサウンドが味わえる。このままバンドが活動を続けていたらものすごい作品を作ったのではないかという気もする。
CD化のボーナスとして、1977年に録音されたライブ音源と、76年の未発音源を追加収録。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 神秘的度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

VA/Spaghetti Epic 「Six Modern Prog Band for Six '70 Prog Suites」
MUSEAレーベルによるオムニバス、イタリアの西部劇「続・夕日のガンマン」をテーマにした作品。2004年作
HAIKARA、RANDONE、TILION、La Voce Del Vento、TAPROBAN、TRIONという6バンドが参加、
ハイカラとトリオン以外はイタリアのバンドで、それぞれ20分を超える大曲を持ち寄り、全6曲を2CDに収録。
HAIKARAは、女性ヴォーカルの歌声に牧歌的なアコーディオンが鳴り響き、北欧らしい涼やかな叙情で
大人の哀愁を感じさせるサウンド。RANDONEはやわらかなオルガンにムーグシンセが鳴り響き、
メロウな叙情ギターを乗せ、ときに女性ヴォーカルの歌声も加わった、古き良きプログレの感触が楽しめる。
TILIONはイルバレを思わせるイタリアらしい混沌とした世界観とともに、スリリングな展開で濃密に聴かせる。
La Voce Del Ventoは、オルガンのも色にアコースティックな叙情も含んだ大人の味わいのプログレサウンド。
TAPROBANは、イタリアらしいキーボードプログレにやわらかな叙情の歌ものパートも含んだ構築センスが光る。
TRIONはオルガンにメロトロン、ムーグシンセを鳴り響かせる、インストの叙情シンフォニックロックサウンド。
どのバンドも持ち味を発揮したドラマティックな大曲で、マカロニウエスタンを知らずとも楽しめる濃密なオムニバスに仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ほぼイタリア度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

VA/ ILIAD 「Grand Piano Extravaganza」
MUSEAレーベル主催、ホメロスの叙事詩「イーリアス」をテーマに、各国の鍵盤奏者によるグランドピアノの独奏を集めた作品。
LA TORRE DELL'ALCHIMISTA、Marco Lo Muscio、Guy Le Blanc(NATHAN MAHL)、INNER DRIVE、
JINETES NEGROS、SIMON SAYS、SENOGUL、LADY LAKE、WICKED MINDS他、ソロプレイヤーを含む
シプログレバンドのシンセ奏者が集結。それぞれが3~6分前後のピアノ曲を披露してゆく。
なにせピアノだけなので、ロック色はほぼ皆無なのだが、そこはプログレ系のアーティストたち、
ピアノのみであっても変則リズムを含んだ展開力と優雅なメロディセンスで、これがなかなか楽しめる。
単なるクラシック的なものではない、表情豊かな楽曲が叙事詩的なドラマ性をともなって連なってゆく。
のんびりとお茶でもしながら、各奏者の奏でるピアノの音色を優雅に鑑賞したい作品です。
クラシカル度・・9 プログレ度・・7 ピアノ度・・10 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Sigur Ros 「valtari」
アイスランドのアンビエントロック、シガー・ロスの2012年作
4年ぶりとなる6作目で、うっすらとしたシンセに、やわらかな歌声を乗せたしっとりとした聴き心地。
まさに癒し系アンビエントロックというべきサウンドであるが、ノイズを取り入れた空間的なアレンジなど
プログレリスナーにも楽しめるようなセンスを随所に感じさせる。やわらかな繊細さに包まれた作風であるが、
しだいに盛り上がってゆくポストロックとしてのダイナミズムも残している。これはかなりの傑作でしょう。
プログレ度・・7 ロック度・・3 しっとり繊細度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る




Dream Aria 「Fallen Angel」
カナダのシンフォニックハード、ドリーム・アリアの2011年作
美しいシンセアレンジにキュートな女性ヴォーカルの歌声、わりとハードなギターが合わさったサウンド。
ゲストによるラウドなギターがメタル感触をかもしだしていて、ややミスマッチな感じながら、
厚みのあるシンフォニックなアレンジや美しい女性声を乗せた浮遊感はなかなか悪くない。
イギリスのThe Reasoningあたりにも通じる、ハードロック感触のある女性声シンフォというべきか。
ラストの8分近い大曲はプログレ的なインストが良い感じであるが、全体的には楽曲自体がややごちゃごちゃしていて
せっかくの女性ヴォーカルの美しさが活きていない。むしろシンプルにキャッチーなメロディのフックを磨いてほしい。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7
Amazon.co.jpで詳細を見る


Apocalypse 「Refugio」
ブラジルのプログレバンド、アポカリプスの2003年作
80年代から活動する中堅バンドで、オルガンやムーグを含むプログレらしいシンセに
ポルトガル語のヴォーカルを乗せて軽妙なアンサンブルで描くシンフォニックロック。
テクニカルとまではいかない軽やかさな聴き心地で、楽曲におけるいくぶん唐突な展開は、
マイナーなB級バンドの雰囲気もかもしだしているのだが、随所に聴かせる泣きの叙情ギターや、
SAGRADOあたりにも通じる南米らしいやわらかな叙情性はなかなかのもの。
90年代を引きずった作風といえるが、むしろそのネオプログレ的なシンフォ臭さを好む方なら、
気に入るのではなかろうか。Tempus Fugitあたりをより濃密なシンフォに仕立てたというような力作。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 南米度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



1/8(土)
本年もプログレでよろしくお願いします!(15)


KAUKASUS 「I」
MOTORPSYCHOのケティル・ヴェストラム・エイナーソン、元ANGLAGARD~WHITE WILLOWのマティアス・オルソン、
そしてライス・マーシュという、ノルウェー、スウェーデン混合のユニット、コーカサスの2015年作
マティアス・オルソンといえば、NECROMONKEYを結成して話題を呼んだが、本ユニットの方はトリオ編成による、
アナログ感に包まれたシンプルなアンサンブルに、ライス・マーシュのマイルドな歌声を乗せた、
ダークな空気感に包まれたサウンド。メロトロンを含むスペイシーなシンセにフルートが妖しく鳴り響き、
モーターサイコのようなスケール感と、北欧らしい涼やかな聴き心地に、アヴァンギャルドなセンスも覗かせる。
クリムゾンやANEKDOTENなどを思わせる部分もありつつ、フルートとシンセをメインにしたアンビエントなナンバーや
モダンなポストプログレ風味も含んだ、古さと新しさを自然体で内包したような強力作です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 北欧度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Mats/Morgan 「Schack Tati」
スウェーデンのアヴァンデュオ、マッツ・アンド・モルガンの2015年作
ここ数作はバンド名義での作品だったので、純粋なユニットとしてはずいぶん久しぶりのアルバムとなる。
2~3分前後の小曲を中心に、きらきらとしたシンセにデジタリィなアレンジを含んだドラムを中心に聴かせるサウンド。
モルガン・オーギュレンはドラムだけでなく、ギターにベースも担当、息子のアルヴィン・アグレン(10歳)もヴォーカルで参加、
可愛らしい歌声を披露している。いつものような軽快で、アヴァンギャルドなポップ性もありつつ、マッツのシンセとハーモニカで
しっとりと聴かせるアンビエントなナンバーなど、不思議にメロディアスな曲も多く、全体的にもメリハリのある曲構成と共に
成熟された大人の余裕が感じられる。Simon Steenslandが参加したナンバーでは、そのテクニックのあるギタープレイも楽しめる。
コロコロとしたポップなアヴァンロックの中に、北欧らしいゆったりとした空気感が感じ取れるような好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

MORGAN AGREN 「Batterie Deluxe」
スウェーデンのミュージシャン、モルガン・オーギュレンのソロ。2015年作
Mats/Morganのドラマーとして活躍する彼の初のソロアルバムで、本作ではドラムだけでなく、ギター、ベース、
ヴァイオリンなども演奏。デジタリィなシンセによるテクノロック的な感触に、エフェクトのかかったドラム、ヴァイオリン、
ときに怪しげな語りやヘヴィなギターも加わって、アヴァンギャルドなセンスに包まれた先鋭的なサウンド。
モルガンの超絶なドラムプレイを期待すると少々肩透かしなのだが、(もちろん曲によっては圧巻のプレイを披露)
あえてドラムにフォーカスするわけでなく、フランク・ザッパばりのアヴァンロックの極北を描くセンスというのは、
さすがマッツ/モルガンの片割れというべきか。その相棒であるマッツ・エーベリをはじめ、鬼才、サイモン・スティーンスランド、
デヴィン・タウンゼンド、フレドリック・トーデンダルなどがゲスト参加。鬼才は鬼才を呼ぶということか。Mats/Morgan好きはマスト。
ドラマティック度・・6 プログレ度・・7 アヴァンギャル度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Simon Steensland 「Fat Again」
スウェーデンのマルチミュージシャン、サイモン・スティーンズランドの2009年作
Kamikaze Unitedにも参加していたMATS/MORGANのモルガン・オーギュレンが本作にも全面参加、
のっけから16分の大曲で、テクニカルなアンサンブルとともエキセントリックなセンスが炸裂、
Gosta Belings Sagaのエイナー・バルダーソンのテクニカルなギターに、アコーディオンやクラリネットなどを含む
チェンバーロック的な感触が加わって、ミステリアスな空気感とともにヘヴィなギターとモルガンのドラムがたたみかける
なんとも強力なサウンドだ。中盤ではコーラスの美しい2分前後の小曲などをゆったりと聴かせつつ、
ラストは20分の大曲で、MATS/MORGANをチェンバー寄りにしたというダークなアヴァンロックが味わえる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Simon Steensland 「A Farewell to Brains」
スウェーデンのマルチミュージシャン、サイモン・スティーンズランドの2015年作
いまや北欧が誇る鬼才というべき存在だろう。本作にも盟友であるモルガン・オーギュレン(MATS/MORGAN)が参加、
さらには、サイモンが敬愛する元UNIVERS ZEROのベーシスト、ギ・セジュールがゲスト参加している。
17分におよぶ一曲目は、うっすらとしたシンセにクラリネットが妖しく鳴り響く、ダークなチェンバーロックで、
MATS/MORGANを思わせる軽妙でとぼけた味わいと、不穏な空気が合わさったスリリングな大曲。
ほぼインスト中心だが、今作ではUNIVERS ZEROのようなドラマティックなスケール感が加わって、
チェンバーロックとしてのシリアス性が強まったという印象だ。ラストの17分の大曲では、アヴァンロックの偏屈さと
女性コーラスなとを含んだ神秘的な雰囲気を含んだ、得体の知れない世界観が見事に表現されている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Alamaailman Vasarat 「Valta」
フィンランドのチェンバー・プログレ、アラマーイルマン・ヴァサラットの2012年作
Hoyry-Koneを前身に2000年にデビュー、本作は5作目となる。トロンボーン奏者は脱退してしまったようだが、
サックス、トランペット、ホルン、チューバックスなどのブラスサウンドを、大胆にロックに融合させた作風は本作も不変。
歪んだチェロがヘヴィに鳴り響き、ロックなドラムの上に管楽器を乗せた独特の聴き心地に加えて、
ときに哀愁を含んだアコーディオンやメロディカの音色が、ユーモラスな響きで楽曲を彩ってゆく。
ヘヴィなタンゴ調のナンバーなども、ギャグではなく本気のそれで、ある意味では、チェロでメタルをやっている
Apocalypticaなどにも通じるセンスかもしれない。ギターもベースもおらずとも、どっしりと重厚なのがすごい。
ドラマティック度・・ 7 プログレ度・・8 ブラスロック度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Steve HackettGenesis Revisited: Live At Hammersmith
イギリスのギタリスト、スティーヴ・ハケットのライブ作品。2013年作
ジェネシスをセルフカヴァーした2012年作にともなうツアーから、イギリス、ハマースミスでの公演を3CD+2DVDに収録。
ヴォーカルには、ナッド・シルヴァン(Agents of Marcy)、ベースにリー・ポメロイ、シンセにはロジャー・キング
ドラムはゲイリー・オトゥール、フルート&サックス、ロブ・タウンゼンドというメンバーで、1曲目から名曲“Watcher of the Skies”で
艶のあるハケットのギターワークに、美しいシンセワーク、そしてピーター・ガブリエルを思わせるナッドのヴォーカルで、
まさに往年のGENESISの世界観を見事に蘇らせている。ゲイリー・オトゥールのタメの効いたドラムも見事でアンサンブルの核を担う。
ゲストヴォーカルにニック・カーショウ、ジョン・ウェットン、ジャッコ・ジャクジクが参加、さらにはスティーブ・ロザリー(ずいぶん太ったな)、
女性ギター奏者のアマンダ・レーマンがステージに華を添える。“月影の騎士”や“The Musical Box”といった往年の名曲にはやはりぐっとくる。
そしてこれぞ英国というべきディープなウィットと幻想に包まれたの大曲“Supper's Ready”でステージはクライマックスを迎える。
アンコールでは“Firth of Fifth”、“Los Endos”を披露、2時間40分におよぶステージが幕を閉じる。まさにGENESISファンは必見のライブである。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・9 GENESIS度・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Steve Hackett「Genesis Revisited: Live At The Royal Albert Hall
スティーヴ・ハケットのライブ作品。2014年作
2013年イギリス、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでのステージを2CD+DVDに収録。
前回のハマースミスは5枚組というボリュームだったが、今作は3枚組とコンパクトにまとめられている。
メンバーは同じく、ナッド・シルヴァン、リー・ポメロイ、ロジャー・キング、ゲイリー・オトゥール、ロブ・タウンゼンドというメンツで
今回は1曲目から7拍子の名曲“Dance on a Volcano”でアグレッシブにスタート。円形状のアルバートホールの厳かな雰囲気のなか、
メンバーの巧みな演奏が繰り広げられる。続いて“Dancing with the Moonlit Knight”で早くもステージは最高潮、
The Flower Kingsのロイネ・ストルトがギターで参加、ハケットとの夢のツインギターが実現した“The Return of the Giant Hogweed”、
続く“The Musical Box”が前半のハイライト。後半は、“Firth of Fifth”、“サルマシスの泉”、そして大曲“Supper's Ready”という、
往年の名曲による濃密な流れがじつに圧巻だ。アンコールはお待ちかね“Watcher of the Skies”~“Los Endos”で締めくくる。
ゲストヴォーカルにレイ・ウィルソン、アマンダ・レーマン、ジョン・ウェットンが参加。ハマースミスに続きGENESISファンはマスト。
ライブ演奏・・9 ライブ映像・・9 GENESIS度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Citizen Cain's Stewart Bell 「The Antechamber of Being(Part 1)」
イギリスのプログレバンド、CITIZEN CAINのシンセ奏者、ステュアート・ベルによるソロ。2014年作
10分を超える大曲を中心にした組曲形式のコンセプトアルバムで、自身でシンセの他、ドラム、ヴォーカルをこなし
美しいシンセとマイルドなヴォーカルを乗せて、ドラマティックに展開する英国らしいシンフォニックロックを構築する。
CITIZEN CAINのヴォーカル、ギター、THE WATCHのヴォーカル、さらにはAYREONのアンソニー・ルカッセンがゲスト参加、
初期のGENESISに通じるシアトリカルな幻想性と、ときににアヴァンギャルドなセンスが交差して、じつに濃密な味わいである。
ときに女性ヴォーカルも加わって、男女ヴォーカルによるロックオペラ的な雰囲気もかもしだす。トータル74分におよぶ力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 濃密度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



Contemporary Dead Finnish Music Ensemble 「Land of Hope」
フィンランドのハードプログレバンド、コンテンポラリー・デッド・フィニッシュ・アンサンブルの2009年作
ギター&シンセのアンティ・ぺソネン、元HÖYRY-KONEのシンセ奏者マティ・ヤラヴァを中心に、
KATAJAINEN KANSAのエーロ・ウーティモ、元STRATOVARIUSのトゥオモ・ラシラをドラムに迎えた編成で、
女性ヴォーカルのやわらかな歌声に、メロウなギターとオルガンが重なり、適度なハードさを含んだサウンドで
北欧らしい涼やかな叙情を描き出す。いくぶん屈折したアヴァンギャルド性も垣間見せつつ、
メタリックなハードさと女性声を乗せた浮遊感が交差する、なかなか個性的な聴き心地である。
ストリングスが艶やかに鳴り響くナンバーや、ラストの10分を超える大曲では、ドラマティックなな展開力が楽しめる。
一方では、プログレなのかシンフォなのかハードロックなのか、方向性的な曖昧さをもう少し突き詰めて欲しい。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Raoul Bjorkenheim, Bill Laswell, Morgan Agren 「Blixt」
ノルウェーのアヴァン・ジャズロック、SCORCH TRIOのギタリスト、ラウル・ビョーケンハイムと
Mats/Morganのモルガン・オーギュレン、そしてアメリカの大御所ベーシスト、ビル・ラズウェルによるユニットの2011年作
それぞれが鬼才というべき強烈な個性を持ったプレイヤーによるトリオであるから、当然のように超絶なバトルと、
テクニカルなアンサンブルでたたみかける。フリーなジャズロックといえばそれまでだが、型にはまらない奔放なギターに、
軽やかにして攻撃的なモルガンのドラム、そしてどっしりとしたベースを響かせるビルによるインタープレイは、
息もつかせぬ緊張感で、もはやジャンル分け不能。アヴァンギャルドでフリーキーでありながら、不思議とアンサンブルの一体感が
楽曲に方向性を与えていて、決してごちゃごちゃな感じにはならないところは、各メンバーのセンスと素養の豊かさだろう。
演奏度・・9 テクニカル度・・9 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


PETER FERNANDES 「Q.E.D.」
アメリカのシンセ奏者、ピーター・フェルナンデスのソロ。2014年作
ギターにリチャード・ハレビーク、ブレット・ガースド、ベースにリック・フィエラブラッチ、ジミ・ジョンソン
ドラムにはヴァージル・ドナティ、シェーン・ガラース、ジョエル・ローゼンブラット、ゲイリー・ハズバンド
そしてシンセにデレク・シェリニアンといった名うてのメンバー参加した、軽妙なフュージョンロックサウンド。
オールインストながら、ソロパートでは各メンバーがそれぞれにテクニカルなプレイを披露していて、
メロディックな優雅さとテクニカル性のバランスがとれた聴き心地。PLANET Xなどに比べると
ジャズロック的なやわらかな感触で、カンタベリー好きのプログレリスナーなどにも楽しめる好作品だ。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 フュージョンロック度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Magnesis 「L'immortel Opera」
フランスのプログレバンド、マグネシスの2006年作
結成は80年代というベテラン、本作は5部構成のストーリー的なコンセプト作で、美しいシンセにメロウなギターで聴かせる
いわゆるGENESISタイプの王道のシンフォニックロック。フランス語の語りを含んだシアトリカルな雰囲気は、
やはりANGEを思わせる世界観で、クラシカルなピアノや泣きのギターフレーズなど、メリハリのある構成も楽しめる。
15分、9分、11分、9分という大曲揃いなので、どうしても長尺感があるのだが、完成度というよりはこのフランスらしい
空気感を味わうバンドなのだと思う。叙情的ではあるがメロディックな抜けは良くないというのもいかにもフランス的である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 フレンチ度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る



Va/ DANTE'S PURGATORIO: THE DIVINE COMEDY PART II
MUSEAレーベル主催のオムニバス。ダンテの「神曲」をテーマにした壮大なプロジェクトの2作目。2009年作
SIMONS SAYS、GROOVECTOR、Mist Seasonといった北欧勢から、NUOVA ERA、MAD CRAYONなどのイタリア勢、
NEMO、FLAMBOROUGH HEAD、LITTLE TRAGEDIES、Yesterdaysといったヨーロピアンシンフォの中堅どころに加え、
NEXUS、Entlance、EQUILIBRO VITAL、JINETES NEGROSも、Raimundo Rodulfoなどの南米のバンドまで多数が参加。
CD4枚組で、それぞれのバンドがドラマにそった流れで楽曲を綴ってゆく。オルガンやムーグシンセにメロトロンと、
どのバンドも王道のシンフォニックロックスタイルでよい感じだなのだが、さすがに4CDで4時間超は聴くのが大変。
1作目に比べても、全体的にやや魅力的なナンバーが少ないような気もするが、ロシアのLITTLE TRAGEDIESや
チリのENTLANCE、オランダのFLAMBOROUGH HEADあたりはさすがのコテコテシンフォまくりでよいですな。
それと、アメリカのMaxwell's Demonがこの中では異色のアヴァン・プログレで面白かった。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 濃密度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

VA/PARADISO: THE DIVINE COMEDY PART III
MUSEAレーベル主催のオムニバス。ダンテの「神曲」をテーマにした壮大なプロジェクトの3作目。2010年作
本作は、イタリアのピアニストMarco Lo Muscioの繊細なピアノによるイントロで幕を開け、続くLITTLE TRAGEDIESが
クラシカルなキーボードプログレでたたみかける。NUOVA ERA、GREENWALL、DAALといったイタリア勢をはじめ、
BRIGHTEYE BRISON、GROOVECTOR、SIMON SAYS、MIST SEASONなどの北欧勢、FLAMBOROUGH HEAD、
NEMO、YESTERDAYS、KOTEBELというヨーロッパ勢に、NEXUS、ECHOES、Jaime Rosas、JINETES NEGROS、
Raimundo Rodulfoという南米勢を加えた、ラスト作にふさわしい濃密なメンツが集結。CD4枚合計260分の内容だ。
個人的には、美しい女性ヴォーカルの叙情が素敵なGreenWall、メロウな泣きのギターで聴かせるNEXUS、
キャッチーな抜けの良さのSIMON SAYS、涼やかで繊細な叙情のMist Season、これぞシンフォニックというLady Lakeなど、
最終章にふさわしい充実の内容でした。1作目から合計してCD12枚、これを一気に聴いたら相当な満腹感でしょうな。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 濃密度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



12/29
メタルとプログレで700枚達成!(278)
*年間ベストはこちらから


IQ 「Live On The Road of Bones」
イギリスのシンフォニックロック、アイキューのライブ作品。2016年作
2015年イギリス公演のステージをCD2枚に収録。2014年作「Road of Bones」からの楽曲を中心にしつつ、
往年の代表曲もまじえたステージで、ピーター・ニコルズの味わい深いヴォーカルにメロウなギターと
オルガンなどを含む古き良き感触のシンセワークとともに、王道のシンフォニックロックを聴かせる。
オフィシャルブートレック゛ということで、音質は多少ラウドながらも、むしろライブならではの迫力ある臨場感が伝わってくる。
ポンプロックルーツのメロウな翳りを含んだ空気感は、オールドなファンにもアピールするだろう。ファンは必聴のライブ作品。
ライブ演奏・・8 ドラマティック度・・8 臨場感度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら

District 97 「In Vaults」
アメリカのハードプログレバンド、ディストリクト97の2015年作
女性Voにシンセを含む5人編成で、本作は3作目となる。のっけからぐっとメタリックな感触で、
やわらかな女性ヴォーカルを乗せた優雅さとヘヴィネスとのコントラストが際立っている。
モダンな硬質感と適度なにダークな雰囲気は、メタルコア風味のゴシックメタル的でもあり、
紅一点、レスリー・ハント嬢の伸びやかな歌声が引き立っている。ヘヴィな曲調から一転して、
繊細な叙情的パートがふっと現れると、プログレ/シンフォニックロックとしての側面が覗かれて、
あえて二面的な構成にしたバンドの意図がうかがえる。アルバム中盤以降はオルガン鳴り響く、
カンタベリー風味のやわらかなプログレが戻ってくるのでご安心を。ハードな感触を見せつけながら、
全体的にはしっかりプログレ心を残した優雅で軽妙なサウンドが楽しめる力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 モダンプログレ度・・8 適度にハー度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

District 97 With John Wetton「One More Red Night - Live in Chicago」
アメリカのハードプログレバンド、ディストリクト97のライブ。2014年作
ジョン・ウェットンを迎えての2013年のライブを収録。全編KING CRIMSONのカヴァー音源で構成されたステージで、
本家よりもモダンでハード寄りの演奏ながら、楽曲の雰囲気を忠実に再現、そしてなによりウェットンの歌声で
“21世紀の精神異常者”、“Starless”、“偉大なる詐欺師”など、往年のクリムゾンのナンバーが楽しめるというのはファンには嬉しいだろう。
枯れた味わいのウェットンの歌声に、バンドの女性シンガー、レスリー嬢が加わり男女ツインヴォーカルの味わいもいい感じだ。
バックの演奏も、かなりクリムゾン的なグルーブ感をかもしだすドラムを中心に、巧みに安定したアンサンブルが見事。
ジョン・ウェットンやクリムゾンのファンの方も、ディストリクト97というバンドの存在を知ってもらえるのではないだろうか。
ライブ演奏・・8 ジョン・ウェットン度・・8 クリムゾン度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Rhys Marsh 「Sentiment」
英国出身、ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2015年作
メロトロンを含むやわらかなシンセに、マイルドなヴォーカルとアコーステッィクギターを乗せて
アナログ感に包まれた温かみのある叙情と、薄暗い翳りに包まれた、ポストプログレ的なサウンド。
楽曲は3~5分前後とわりとコンパクトで、プログレ的な派手な展開というのはあまりなく、
ゆったりと聴かせる歌ものという印象だが、英国と北欧を合わせたような湿り気を含む空気感と、
メロトロンが鳴り響くと、ANEKDOTENあたりに通じるシンフォニックな聴き心地が楽しめる。
アーティスティックで繊細な感性にスタイリッシュなポストプログレ要素をまぶしたという好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Rhys Marsh and The Autumn Ghost 「Trio」
ノルウェーで活動するアーティスト、ライス・マーシュの2013年作
自身のギターに、ドラムとシンセを迎えたトリオ編成でのライブをCD2枚に収録。
スタジオアルバムはポストプログレ的な繊細な作風であるが、ライブではより躍動感のあるアンサンブルと、
エモーショナルなヴォーカルを乗せたサウンドで、やわらかな叙情とロックとしてのダイナミズムが同居した聴き心地だ。
抑揚のついた巧みなドラムにジャズタッチのやわらかなピアノ、翳りを含んだ空間的な静寂が緊張感をかもしだし、
トリオ編成でありながら、一体となった演奏が音の迫力を生み出している。ゲストによるフルートが響き渡ると、
サイケな浮遊感にも包まれる。CD2枚で合計66分ほどなのだが、あえて2枚組にしたセンスも洒落ている。
薄暗度・・8 プログレ度・・8 ライブ演奏・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Fredde Gredde 「Brighter Skies」
スウェーデンのマルチプレイヤー、フレドリック・ラーソンによるプロジェクト、フレッディ・ゲラダの2014年作
前作はMOON SAFARI + QUEENというような好作であったが、本作も美麗なシンセにメロディックなギター、
マイルドなヴォーカルを乗せた、キャッチーな抜けの良さに包まれたシンフォニック・プログレが楽しめる。
ギター、ベース、シンセ、ヴォーカルは自身が担当し、ドラムとフルートにはゲストを起用、
QUEENを思わせるコーラスにゴージャスな楽曲アレンジ、若手らしい適度にモダンな構築センスは、
オランダのCHRISや英国のTiger Moth Talesなどにも通じるだろう。11分、18分という大曲も、
あくまで優雅で壮麗な聴き心地。きらびやかな光に溢れる遊園地のような雰囲気の好作品です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅で壮麗度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Iamthemorning 「Lighthouse」
ロシアのシンフォニックロック、アイアムザモーニングの2016年作
ピアノ&シンセ奏者と女性Voによる二人組ユニットで、美しい女性ヴォーカルの歌声に
ストリングスによる優美なアレンジ、繊細なピアノなど、クラシカルな味わいに包まれたサウンド。
ドラムやギターが加わると、ほの暗い叙情と女性声の美しさに包まれたシンフォニックロックになり、
やわらかなフルートの音色も美しくゴシック的な耽美さもあってしっとりとした耳心地で鑑賞できる。
ゲストヴォーカルにはRiversideのマリウスツ・ドゥラが参加、マイルドな歌声を披露している。
ドラムには、Porcupine TreeKing Crimsonにも参加するギャビン・ハリソンが参加、
ベースには同じくPTからコリン・エドゥィンが参加していて、さすがのグルーブを聴かせてくれる。
シンフォニック度・・8 繊細で優美度・・9 女性Vo度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Karfagen「7」
ウクライナのシンフォニックロック、カルファゲンの2015年作
Sunchildでも活躍するアントニー・カルギン率いるバンドで、本作がすでに7作目となる。
のっけから28分の大曲で、SF的な雰囲気のSEから始まり、美しいシンセにメロウなギターの旋律を乗せて、
どっしりとしたシンフォニックロックが広がってゆく。フルートやアコーディオンなどの民族的な色合いも含みつつ、
大仰な展開や盛り上がりはさほどなく、むしろじっくりと大人の叙情を描くような作風である。
マイルドなヴォーカルとギターフレーズによる泣きの叙情は、SatelliteQuidamなど、
ポーランドのバンドにも通じる繊細な感触で、ときに女性ヴォーカルも加わった優美な耳心地。
全体的にはややインパクト不足かもしれないが、やわらかな叙情に包まれた好作品である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

The Badge 「Le Relazioni Pericolose」
イタリアのプログレバンド、バッジの2015年作
17分を超える組曲から始まり、時代的なオルガンの音色にムーグシンセ、どこかまったりとしたドラム、
イタリア語のマイルドなヴォーカルを乗せて、キャッチーな牧歌性を描く、古き良き感触のサウンド。
演奏も歌もヘタウマ感たっぷりで、ギターはテクニックとは無縁のクサいメロディを弾いたりして、
90年代ネオプログレの黎明期にこういうバンドがいろいろ出てきたなあと思い出すような聴き心地で、
有名クラシックの引用フレーズを恥ずかしげもなく奏でてしまうシンセも含めて、確信犯的なレトロ主義。
もう微笑ましいとしか言えないのだが、このロマンあふれる雰囲気には心惹かれるものがあるのです。
ドラマティック度・・7 ヘタウマ度・・8 あふれるロマン度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Maury E I Pronomi 「Eccitazioni Neoclassiche」
イタリアのプログレバンド、マウリィ・E・I・プロノミの2005年作
繊細なピアノにイタリア語のヴォーカル、ややハードめのギターを乗せて、やわらかな叙情を聴かせる。
こもり気味の音質や、演奏力の弱さも含めて、適度なB級感は、かつてのLe Ormeにも通じるだろう。
フルートの音色なども含んだ、70年代を思わせるくぐもったような空気感と幻想性に包まれたサウンドは、
つたないながらもなかなか味があって、初期のCAPあたりが好きな方にも楽しめるだろう。
ドラマティック度・・7 幻想度・・8 イタリア度・・9 総合・・7
Amazon.co.jpで詳細を見る

KFK (Kant Freud Kafka) 「No tengas miedo」
スペインのプログレユニット、カント・フロイト・カフカの2014年作
マルチプレイヤー、Javi Herreraによるプロジェクトで、多重シンセによるシンフォニックな感触と、
メロウなギターワークに、オルガンやムーグなどのプログレ要素が合わさったサウンドで、
繊細なピアノの旋律にヴァイオリンが鳴り響く、クラシカルな優雅さはThe Enidのようでもある。
派手な盛り上がりやテクニカルなプログレ性は希薄ながら、やわらかなフルートやオーボエの音色に、
チェロやヴィオラなどのストリングスの美しさ、泣きの叙情ギターなど、繊細な美意識に包まれた作風で
全体的には上品な味わいであるが、一方ではわりとハードなギターも含んだパートなどもあったりして、
なかなか油断ができない。12分、16分という大曲も、ゆるやかな展開であくまで優雅に構築する。
クラシカル度・・9 プログレ度・・7 繊細で優雅度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

KOTEBEL「Concerto for Piano & Electric Ensemble」
スペインのシンフォニックロック、コテベルの2011年作
前作「Ouroboros」は素晴らしい完成度の傑作であったが、6作目となる本作はタイトル通りグランドピアノ含んだ
43分におよぶ長大な組曲で幕を上げる。一聴してクリムゾン風でもあるヘヴィプログレ的なアンサンブルに、
クラシカルなピアノがかぶさり、テクニカルかつ優雅なサウンドを構築。適度にアヴァンギャルドなセンスは
チェンバーロック風でもあり、巧みな演奏力による緊張感と、ただようミステリアスな空気感も素晴らしい。
アコースティックギター、スパニッシュギターとピアノが合わさる繊細なパートも説得力十分で、
音楽家としての磨かれた技量と美意識がスリリングなサウンドとなって耳に広がってゆく。
たんなるクラシカル・プログレの壁を突き破りそうな、音楽としての芸術性が垣間見える大傑作だ。
クラシカル度・・9 プログレ度・・8 構築センス・・9 総合・・8.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

π2(PI2)「Silent Running」
スペインのシンフォニックロック、パイ・ツーの2009年作
シンセ奏者Pito Costa氏を中心にしたユニットで、オルガンやムーグを含むシンセにメロウなギター、
英語によるマイルドなヴォーカルを乗せ、キャッチーなメロディアス性で聴かせるサウンドは、
Neal Morseあたりに通じるやわらかな感触だ。随所に泣きのメロディを奏でるギターも含めて
CAMELGOTICなどを思わせる、繊細で優雅な耳心地というのはなかなか日本人好みと言えるだろう。
ラストは25分を超える大曲で、ゆったりとした展開の中に叙情的なギターフレーズを盛り込み、
優しいヴォーカルを乗せた繊細な美意識は、むしろイギリスや北欧のバンドのようだ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 優雅な叙情度・・9 総合・・7.5

HYACINTUS 「4th Universe」
アルゼンチンのシンフォニックロック、ヒヤシンタスの2015年作
聴くのは2002年作以来となる。マルチミュージシャン、Jacinto Miguel Corralによるプロジェクトで、
シンフォニックなイントロで幕を開け、オルガンが鳴り響き適度にハードなギターを乗せた、
70年代を思わせる古き良きアンサンブルに、ストリングスによるアレンジを加え、
スペイン語のヴォーカルとともに濃密なサウンドを描き出す。随所にアコースティックな哀愁の叙情を覗かせつつ、
泣きのギターがここぞと盛り上げる大仰さも含めて、南米らしいシンフォニックロックの味わいも十分だ。
いくぶんこもり気味の録音などがいかにも自主制作らしいのが惜しいが、壮大な力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 南米度・・8 総合・・7.5

PHIDEAUX 「Ghost Story」
アメリカのプログレユニット、フィドーの2004年作
マルチミュージシャン、Phideaux Xavierを中心にしたユニットで、エレクトロなシンセアレンジに、
モダンなヘヴィさを含んだ、オルタナロック風味のサウンド。のちの作品に比べるとプログレ質感は薄く、
むしろモダンなミクスチャーロックという印象で、キャッチーな歌メロはエモーショナルロック的でもある。
一方では哀愁を感じさせる、ブルージーなナンバーもあったりと、本作の時点ではまだ雑多な方向で、
知的な構築性とセンスの片鱗は覗かせるものの、プログレとしての楽しむにはちときついかも。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 モダンロック度・・8 総合・・7
Amazon.co.jpで詳細を見る



Shaun Guerin 「The Epic Quality of Life」
アメリカのマルチミュージシャン、ショーン・グエリンの2003年作
Genesisトリビュートバンド、Cinema Showのメンバーで、ジャケもポール・ホワイトヘッドが手掛けているように
ジェネシスを思わせるメロディを随所に含んで、Yesのような軽やかなアンサンブルで聴かせるサウンド。
ショーン自身の歌声も、フィル・コリンズを思わせるかすれた味わいで、往年のプログレ色豊かな楽曲にマッチしていて、
本職であるドラムも手数の多いプレイで躍動的なアンサンブルを描いている。メロトロンやムーグを含むきらびやかなシンセと
Yesのスティーブ・ハウに通じるようなテクニカルなギターも随所に光っている。プログレ好きならにんまりした楽しめるような好作品。
尚、ショーン・グエリンは本作を遺して、2003年に41才の若さで亡くなっている。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 フィルコリン度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Tirill 「Um Himinjodur 」
ノルウェーの女性アーティスト、ティリルの2013年作
美しい女性ヴォーカルの歌声にアコースティックギターのつまびき、うっすらとしたシンセ、オルガン、
やわらかなリコーダーの音色にヴァイオリンも重なった、しっとりと優雅な聴き心地のサウンド。
White Willowの1stのような北欧らしい翳りと、フォーキーな質感を含んで涼やかな空気を描いてゆく。
薄暗い妖しさで魔女めいた神秘性も感じさせつつ、キュートな美声にうっとりと聴き入れる。
メロトロンが鳴り響き、エレキギターが加わると、Anglagardにも通じるようなシンフォニックな感触も現れて、
プログレファンにもかなり楽しめるだろう。北欧トラッドシンフォ+女性ヴォーカルという好作品。
ドラマティック度・・7 女性Vo度・・8 北欧の翳り度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


FROM.UZ 「Audio Diplomacy」
ウズベキスタンのプログレバンド、フロム・ウズの2007年作
ギター、ベース、ドラム、シンセの4人編成で、モダンなシンセアレンジと適度にハードさと
硬質なテクニカル性で聴かせるインストサウンド。先の読めない偏屈な展開力も面白く、
随所にメロディックなフレーズや渋みのあるプレイを奏でるギターのセンスもなかなかのもの。
ベースのタッピングも恰好よく、ときにジャズ的な優雅さも垣間見せつつ、タイトなリズムアンサンブルは、
とても辺境のバンドとは思えない。のちのアルバムに比べればメロディのフックではまだ物足りないものの、
この時点でもすでに十分な実力派であることが分かる。10分前後の大曲が多いので、オールインストということで
ついBGMになってしまう感じもあるのだが、オリエンタルな香りを含んだ異色の力作だ。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 テクニカル度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る



12/23
プログレ年間ベスト今夜いよいよ発表!(260)
こちらから


Steve Hackett「Wolflight」
イギリスのギタリスト、スティーブ・ハケットの2015年作
前作がGENESISのセルフカヴァーアルバムだったので、オリジナルとしては2011年作以来となる。
オーケストレーションを含んだ優美なアレンジにハケットの泣きのギターが響き渡る1曲目からしてもう素晴らしい。
今作ではエレキギターのパートが増えたことで、往年のロック色とプログレ感がずいぶん復活し、
コンビを組むロジャー・キングのシンセとともに、重厚かつシンフォニックな味わいが楽しめる。
自身のヴォーカルを乗せたマイルドな歌ものパートや、アコースティックな繊細さもたっぷり含ませて
優雅な美意識に包まれたハケット節のサウンドにうっとりと聴き入れる。円熟の極致というべきさすがの傑作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細で優雅度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Robert Reed 「Sanctuary II」
イギリスのミュージシャン、ロバート・リードの2016年作
MAGENTAのシンセ奏者としても知られる彼が、Mike Oldfieldへのオマージュを込めて作り上げた作品の続編。
ドラムにはサイモン・フィリップスが参加、自身がギター、ベース、シンセ、マンドリン、リコーダー、ブズーキ、ビブラフォンなどなど、
ほぼすべての楽器を演奏し、20分前後の大曲2曲のみという構成も、いかにもマイク・オールドフィールド的である。
美しいシンセにケルティックで涼やかなギターフレーズが重なり、民族的なコーラスなどを含んだ作風は、「Hergest Ridge」や
「Ommadawn」、「Incantations」あたりに通じる優雅な聴き心地。トム・ニューマンがプロデュースというのも含めて、
マイク・オールドフールド的過ぎる…という気もするのだが、一方では随所にMAGENTAを思わせる軽妙な感じが、
本家の翳りある叙情とは少し異なるところかもしれない。ともかく、やり過ぎなまでにオールドフィールド愛を貫いた力作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 オールドフィール度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

MAGENTA 「The Singles - Complete」
イギリスのプログレバンド、マジェンタの2015年作
2007年に発売された「The Singles」に、新たに楽曲を追加して2枚組仕様にした完全版。
美しいシンセアレンジにクリスティーナ嬢の美声を乗せて、優雅に聴かせるシンフォニックロックサウンドは、
キャッチーで爽快なメロディアス性を含めて、いわばYes+Renaissanceという聴き心地でもある。
Disc1にはこれまでのバンドのカラーを散りばめたシングル曲を12曲収録。EL&P“Lucky Man”のカヴァーなども
美しく叙情的な仕上がりだ。Disc2には新規リミックスや別バージョン、未発曲などを12曲収録。
バンドのファンはもちろん、バンドの入門用としてもうってつけの企画アルバムである。
メロディック度・・8 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Christina 「The Light」
イギリスの女性シンガー、クリスティーナのソロ。2015年作
MAGENTAのシンガーとして知られる彼女のソロ2作目。美しいヴォーカルを中心にゆったりと聴かせる作風で、
楽曲は4~5分前後でわりとシンプルな歌もの路線であるが、楽曲を手掛けるのはMAGENTAのロブ・リードであるから、
メロトロンやオルガンなどを含んだシンセをたっぷり含ませたシンフォニックな聴き心地が随所に楽しめる。
繊細なピアノやオーケトラルな壮麗さも含んだアレンジは、むしろコンテンポラリーな作風でロック的な感触が薄い分、
じっくりと彼女の歌声を味わえる。マジェンタのファンはもちろん、繊細な女性ヴォーカル作品が好きな方にもぜひ。
ジョン・ミッチェル(IT BITES)、アンディ・ティリソン(The Tangent)などがゲスト参加。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Thieves Kitchen 「The Clockwork Universe」
イギリスのシンフォニックロックバンド、シーブス・キッチンの2015年作
元ANGLAGARDのトーマス・ヨハンソンをシンセ奏者に迎えての3作目となる。
美しい女性ヴォーカルの歌声にやわらかなエレピやメロトロン、メロウなギターワークが合わさった
繊細な叙情性のサウンドはこれまで通り。今作ではよりスタイリッシュなアンサンブルが軽妙な味わいで、
ときにジャズロック的でもある優雅さと、メロトロンが鳴り響くシンフォニック性が合わさったという聴き心地だ。
20分におよぶ大曲も濃密になり過ぎず、優美なフルートの音色も含んだ、あくまで涼やかでしっとりとした
優雅な感触というのは、やはりANGLAGARDやWHITE WILLOWなど、北欧のバンドにも通じるだろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


TIGER MOTH TALES 「STORY TELLERS PART ONE」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2015年作
全盲のマルチ・ミュージシャンPeter Johnによる個人プロジェクト。きらびやかなシンセにメロディックなギターを乗せて
リズムチェンジを多用した展開の多いインストパートが、遊園地のようなファンタジックな世界観を描き出す、
優雅なシンフォニックロックサウンド。QUEENのような壮麗な雰囲気をプログレ化したという聴き心地で
マイルドなヴォーカルが入ってじっくりと聴かせる叙情ナンバーや、語りの入ったコミカルなナンバーなども含め
タイトルのように童話的な物語性を感じさせる作風だ。12分の大曲も緩急のついた構築力で、
映画的なドラマ性を巧みにプログレに融合させている。次回作あたりでものすごい傑作を作りそうな気配。
ドラマティック度・・8 プログレ度 壮麗度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Thank You Scientist 「Stranger Heads Prevail」
アメリカのプログレ・モダンロックバンド、サンク・ユー・サイエンティストの2016年作
サックス、トランペット、ヴァイオリン奏者を含む編成で、前作もテクニカルな濃密作であったが、
2作目となる本作も圧巻の仕上がりだ。QUEENのような歌もの的な小曲で始まったかと思えば、
アヴァンギャルドなセンスを含んだテクニカル性に、ヴァイオリンやサックス、トランペットなどが鳴り響く、
ブラスロック的なアレンジと、Coheed and Cambriaあたりに通じるモダンでキャッチーな感触が交差する。
随所にメタリックなハードさや、ポップな歌もの、ジャズロック調、カオティックロックなど、多様な顔を覗かせながら、
結果としてメロディアスなテクニカルロックになっているという。全体的に濃密ながらも聴きやすい力作である。
メロディアス度・・8 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・7 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


ECHOLYN 「I Heard You Listening」
アメリカのプログレバンド、エコリンの2015年作
1991年デビューのベテランで本作はおそらく9作目となる。前作での大人のプログレ路線を継承し、
エレピやオルガンなどを含む繊細なシンセワークにマイルドなヴォーカル、渋みを感じさせるギターとともに
ゆったりと構築される、耳心地のよいサウンドだ。それでいてかつてのGENTLA GIANT的なとぼけた味わいも残していて、
やわらかな音でありながら適度な緊張感を感じさせるのが素晴らしい。アコースティックギターやストリングスによる
優美な叙情性と、アメリカのバンドらしいキャッチーな軽妙さが合わさって、キャリア25年を数えるバンドならではの、
自信と落ち着き、そして積み重ねてきた構築センスが自然な形で融合されている。それでいて決して古臭くない、
優雅で躍動的なアンサンブルで、まさに「大人のプログレ化したGG」というような作風が楽しめる。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 大人の叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Mystery 「Delusion Rain」
カナダのプログレバンド、ミステリーの2015年作
前作まで参加していた元Yesのベノワ・デイヴィッドは脱退して、新たにフルートもこなせるヴォーカルが加入、
サウンドの方はキャッチーなメロディに、キャリアのあるバンドらしい大人の哀愁をにじませた聴き心地で、
新Voの伸びやかな歌声も前任者と遜色ない。10分、19分という大曲を含む、シンフォニックロックとしての
繊細さとダイナミズムを過不足なく盛り込んで、泣きの叙情とともに盛り上がる、メロディのセンスもさすが。
全盛期のPENDRAGONばりの叙情性と北米のバンドらしい抜けの良さを、確かな演奏力と歌唱で構築する、
このクオリティの高さというのは、ひとつ抜きに出た存在と言えるだろう。泣きメロ派は必聴の力作ですな。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 大人の叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Box of Shamans 「Belief & Illusion」
アメリカのプログレユニット、ボックス・オブ・シャーマンズの2015年作
HELIOPOLISのメンバーによる別バンドで、変拍子リズムを含んだテクニカルなアンサンブルと
マイルドなヴォーカルを乗せたキャッチーなメロディアス性が融合した、ハードプログレサウンド。
GENTLE GIANT的なとぼけた味わいの軽妙な聴き心地に、ほどよくモダンな硬質感が合わさって、
10分を超えるナンバーも決してコテコテのプログレにはならず、クールでスタイリッシュな感触だ。
むしろRUSHあたりに通じるアンサンブル重視のサウンドで、メロディックなフックという点ではやや弱い分、
玄人寄りの作風ともいえるかもしれない。個人的にはもう少し濃密な展開が欲しいかなと。
メロディック度・・7 プログレ度・・7 演奏度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Trettioariga Kriget 「Seaside Air」
スウェーデンのプログレバンド、トレッティオアリガ・クリゲットの2016年作
1974~1980年にかけて活動したのちいったん活動休止、本作は2004年の復活作から数えて4作目となる。
サウンドの方は、70年代からの名残を感じさせる、アナログ感あふれるやわらかな感触に、
シンセを含んだ北欧らしい叙情性を、大人の哀愁を含んだメロディで描く素朴な味わいだ。
今作では、ヴォーカルがすべて英語になったことで、独特の土着性はやや薄れたが、
その分、多くのリスナーにアピールする明快さで、アダルトな叙情ロックが味わえる。
派手な展開などはほとんどないのだが、古き良きロック感と北欧プログレを融合させた
このバンドならではの優しく涼やかなサウンドが楽しめる好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 北欧度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Hasse Froberg & Musical Companion「HFMC」
The Flower Kingsのハッセ・フレベリによるユニットの2015年作
前作はプログレハード風味の好作だったが、3作目となる本作も適度にハードなギターと
オルガンを含むシンセアレンジに枯れた味わいのヴォーカルを乗せたサウンドで、
古き良きプログレハードの感触を描きつつ、今作ではよりTFKに接近したような
キャッチーで優雅なシンフォニックロック風味も強まっている。10分を超える大曲では、
プログレらしいドラマティックな展開力とともに、じっくりとメロウな叙情を描いてゆく。
フラキン好きはもちろん、新たにハッセ・フレベリの音楽を知る方にもお薦めの力作だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 TFK度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


CHRIS BEYA ATOLL「ILLIAN-I HEAR THE EARTH」
フランスのプログレバンド、アトールの2015年作
2003年作の復活作「ILLIAN」を新たに英語歌詞にしてリアレンジしたリメイク作品で、
クリスチャン・ベアのメロウなギターをたっぷり盛り込みつつ、マイルドなヴォーカルを乗せた叙情的な作風。
やわらかなフルートの音色も含んだ繊細な聴き心地から、アコースティックなフォルクローレ要素、
オルガンやブルージーなギターを乗せたオールドなロック風味まで、現在形アトールの優雅なサウンドが味わえる。
ただ録音面での弱さがいかにも自主制作的で、個人的にもフランス語のオリジナル版の方が好みかも。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 叙情度・・8 総合・・7.5 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る



Alco Frisbass
フランスのプログレユニット、アルコ・フリスバスの2015年作
2人のマルチミュージシャンによるユニットで、やわらかなエレピの音色に艶やかなヴァイオリンが絡み、
テクニカルなアンサンブルとともに、ジャズロック的でもある軽妙なチェンバーロックサウンドを展開。
YUGENあたりにも通じるスリリングな雰囲気とクラシカルな優雅さに、エキセントリックなセンスをまぶした
緊張感と軽やかな同居したインストサウンドが楽しめる。オルガンなどを含むプログレ的な質感に
随所にメロウなギターフレーズもまぶし、10分前後の大曲も多いが、巧みな演奏力と構築力で聴かせる。
WHITE WILLOW、YUGEN、MINIMUM VITAL、STORMY SIXなどのメンバーがゲスト参加。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 軽妙度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


ECLAT「L'esprit Du Cercle」
フランスのプログレバンド、エクラの2012年作
90年代から活動するバンドで、2001年作「Le Cri de la Terre」以来、10年ぶりとなる5作目。
流麗なギターワークと、オルガンなどを含む古き良きシンセアレンジで軽妙なアンサンブルを描く、
オールインストのサウンド。フュージョンロック的でもある軽やかな優雅さとメロディアス性に、
随所にゆったりとした大人の叙情を感じさせるセンスは、活動20年以上のベテランならでは。
9分の大曲もジャズロック的なやわらかな聴き心地で、決して派手さはないものの、
耳心地の良さでわりとのんびり楽しめる。個人的にはもう少し偏屈な展開力なども欲しいのだが。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 軽妙度・・8 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


12/10
今年もあと3週間!(245)


Big Big Train 「Folklore」
イギリスのプログレバンド、ビッグ・ビッグ・トレインの2016年作
90年代初頭にデビューし、初期のGENESIS路線から現在形シンフォニックへと深化した高品質なサウンドで、
前作「English Electric」は大変な傑作となったが、本作ではBEARDFISHのリカルド・ファーブロムが加入、
女性ヴァイオリン奏者を含む8人編成となり、従来のキャッチーなメロディック路線に適度なモダンとさ、
オルガンが鳴り響く70年代的なアナログ感覚を同居させたというようなサウンドが楽しめる。
渋みのある歌声で大人の叙情を描くナンバーや、フルートが鳴り響き美しいストリングスが重なる
シンフォニックなパートなど、キャリアのあるバンドらしい自然体の展開力でじっくりと構築してゆく。
10分を超える大曲も、ゆったりとした聴き心地ながら、泣きの叙情でじわじわと盛り上げてゆくのがさすが。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 大人の叙情度・・9 総合・・8  過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Frost* 「Falling Satellites」
イギリスのプログレバンド、フロストの2016年作
キーボーディストJEM GODFREYを中心に、ARENAIT BITESでも活躍するJOHN MITCHELLらとともにに結成、
2006年「MILLIONTOWN」は現在形シンフォプログレの傑作として記憶に新しいが、2作を発表後いったん活動を停止
本作はスタジオ作品としては2009年以来となる3作目である。モダンなアレンジと軽快なビート感に包まれた、
キャッチーなメロディックロックという趣で、きらびやかなシンセにデジタルなエフェクトを含んだ感触は、
プログレというよりはミクスチャーロックという雰囲気もする。現在形プログレよりさらに先を行くというセンスでは
かつてのIT BITES的でもあるスタイリッシュな美学も感じさせるが、一方ではポストプログレ的な繊細な叙情も含んで、
適度にハードかつシンフォニックな味付けもなかなか心憎いバランスだ。なんだかんだでクオリティの高い傑作ですな。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 モダン度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Anderson/Stolt 「Invention of Knowledge」
Yesのジョン・アンダーソンとTHE FLOWER KINGSのロイネ・ストルトによるユニットの2016年作
まさかという組み合わせのユニットであるが、内容もまさしくジョン・アンダーソンの透明感のある歌声を活かした
繊細なシンフォニックロックサウンドで、トム・ブリスリンとラレ・ラーションによる美しいシンセアレンジに、
ロイネのメロウなギターワークが重なる優雅な聴き心地。ヨナス・レインゴールドとフェリックス・レーマンという、
フラキン組のリズム隊に、ダニエル・ギルデンロウ(Pain of Salvation)、ナッド・シルヴァンらがコーラスに参加。
ようするに、バックはほとんどTFK関連の北欧プログレ状態。キャッチーで涼やかな叙情性をジョンの歌声で包み込み、
ロイネの抜群のギターワークも楽しめるという。まさにYes+TFKという、プログレファンには桃源郷のような作品だろう。
10~20分ずつ4パートに分けられたアルバム構成も見事で、実力者たちが結集したジョンのための傑作に仕上がっている。
メロディック度・・9 繊細度・・9 ジョンの歌声度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Lee Abraham 「The Season Turn」
イギリスのミュージシャン、リー・アブラハムのソロ。2016年作
GALAHADのメンバーでもあるマルチミュージシャン。今作はのっけから25分に及ぶ大曲で、
美しいシンセアレンジに泣きの叙情ギターを乗せた、正統派のシンフォニックロックサウンドが広がってゆく。
メロトロンやムーグなど古き良き感触のシンセアレンジは、オールドなプログレリスナーにも嬉しいだろう。
前半はゆったりとしたインストパートがメインで、スリリングな部分というのはあまりないが、
ヴォーカル入りの叙情ナンバーでの泣きのギターなどは、かつてのPENDRAGONを思わせ、
ラストの16分の大曲では、プログレ的なテクニカルな間奏部もあり、ドラマティックな展開が楽しめる。
IQのMartin Orford、RIVERSEAのMarc Atkinson、COSMOGRAFのRobin Armstrong、CREDOのMark Colton、
FROST*のDec Burke、TINYFISHのSimon Godfreyなどがゲスト参加している。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Tony Patterson & Brendan Eyre 「Northlands」
英国のマルチミュージシャン、トニー・パターソンと、RIVERSEAのシンセ奏者ブレンダン・エイルによるユニット。2014年作
やわらかなピアノの音色に美しいシンセアレンジとオーケストレーション、アコースティックギターのつまびきや
繊細なフルートの音色とともに、しっとりと繊細なサウンドを描く。REGENESISのVoとしても知らるトニーの歌声は
楽曲に溶け込むようなマイルドな大人の叙情をかもしだし、24分の大曲も、大仰にならない繊細な美意識に包まれて、
ハケットのソロ作などに通じる優しい味わいがある。そのスティーブ・ハケット&ジョン・ハケット兄弟に、ニック・マグナスなどがゲスト参加。
ゆったりとしたニューエイジ風味のナンバーなどもあって、プログレとして聴くには物足りなさもあるのだが、
英国らしい優雅なシンフォニック性と、Marillionのようなモダンでメロウな叙情ロックが合わさったという好作品だ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細で優雅度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Tiger Moth Tales 「Cocoon」
イギリスのシンフォニックロック、タイガー・モス・テイルズの2014年作
マルチ・ミュージシャンPeter Johnによる個人プロジェクトで、美しいシンセにメロウなギターを乗せた、
優雅なシンフォニックロックで、語りを含んだ映画的な雰囲気でファンタジックなストーリー性を描いてゆく。
かつてのGenesisのようなシアトリカルな世界観に、QUEENのようなキャッチーなコーラスハーモニーなども現れて
結果としてIQなどのような、いかにも英国らしいシンフォニックロックとなっている。ドラムは打ち込みなのだが、
オランダのCHRISによるBlack Codexシリーズあたりを思わせるクオリティの高さである。10分を超える大曲なども、
プログレとしての楽曲そのものの引っ掛かりはさほどでもないが、優雅な美意識に包まれた味わいで楽しめる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 優雅度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Synaesthesia
イギリスのプログレバンド、シネステシアの2014年作
英国の新鋭シンフォニックロックバンド、のっけから22分の大曲で、美しいシンセワークを中心に、
メロウなギターにマイルドなヴォーカルを乗せ、繊細な叙情性とともに優美なサウンドを描いてゆく。
FROST*あたりにも通じるキャッチーなモダンさと、古き良きプログレ的なアレンジが合わさった聴き心地で、
派手すぎない展開と泣きのメロディアス性に包まれた、正統派シンフォニックロックのアップデート型というべきか。
反面、安定しすぎて意外性に欠けるという面もあるのだが、かつてのPENDRAGONを思わせる泣きの叙情と、
現在形バンドとしてのキャッチーなセンスも兼ねそろえていて、期待の新鋭バンドであるには違いない。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 叙情度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Karmakanic 「Dot」
スウェーデンのプログレバンド、カーマカニックの2016年作
THE FLOWER KINGSのヨナス・レインゴールドを中心にしたバンドで、ライブ作をはさんで、
スタジオアルバムとしては5年ぶりとなる5作目。ジャケはいつになく地味なのだが内容の方は、
テクニカルかつ軽妙なジャズロック風味と繊細なシンフォニック性が合わさった、いつも通りの質の高さ。
モルガン・アグレンの巧みなドラムに存在感のあるヨナスのベース、ラレ・ラーソンの美しいシンセワークと、
マイルドな情感に包まれたヨラン・エドマンの歌声を乗せ、大人の哀愁を含んだ叙情美をじっくりと描いてゆく。
The Tangentのアンディ・ティリソンがオルガンで参加、ゲストによるコーラスやフルート、サックスなども加わって
優雅な構築性とともに大人の味わいと、やはりフラキン的でもあるメロディックなシンフォニックロックを聴かせてくれる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 大人の叙情度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Barracuda Triangle 「Electro Shock Therapy」
スウェーデンのプログレバンド、バラクーダ・トライアングルの2014年作
The Flower Kingsのヨナス・レインゴールド、トマス・ボディーン、フェリックス・レーマンによるトリオバンドで、
のっけからメロトロンの音色を乗せて、KING CRIMSONを思わせるヘヴィなアンサンブルが広がる。
キーボードトリオの編成ながら、ヨナスがベースとギターを兼任しているので、インストながらも重厚な聴き心地で、
随所に北欧らしい叙情性を覗かせるのは、やはりトマスの美しいシンセワークによるところが大きいだろう。
リズム関しては空間を重視したフリーな感触もあって、その辺も含めてクリムゾン的な実験性も感じさせる。
いわば「クリムゾン化したTFK」というような作風であるが、一方ではヨナスのベースをじっくりと聴かせるパートや、
手数の多いフェリックスのドラムがタイトに躍動するパート、そしてトマスの繊細なシンセをメインにした小曲などもあり、
各メンバーの技巧とそれぞれのセンスをたっぷり味わえるのも嬉しい。フラキンファンはもちろん必聴ですよ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 アンサンブル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Tusmorke 「Fort Bak Lyset」
ノルウェーのプログレバンド、タスメルケの2016年作
前作は北欧らしい土着性と混沌としたサイケ感が合わさったかなりの力作であったが、
3作目となる本作も、妖しくフルートが鳴り響き、オルガンやメロトロンを含む古き良きプログレの感触に、
母国語のヴォーカルによる土着的な質感が合わさったサウンドだ。今作ではメロディにフォーキーな牧歌性が増し
KebnekajseKama Lokaなどにも通じる、トラッドサイケ的な聴き方もできる。ダークな湿り気を感じさせる世界観と
レトロな70'sプログレ感に、女性コーラスなども含んだ呪術性も感じさせるという、なんとも妖しく濃密な作風である。
前作は「北欧版パレポリ」と評したが、今作も北欧からしか出てこない音であるという点で、やはり必聴の出来映えである。
ドラマティック度・・8 妖しげ度・・9 北欧度・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Magic Pie 「King for a Day」
ノルウェーのシンフォニックロックバンド、マジック・パイの2015年作
過去三作はいずれもクオリティの高い傑作であったが、4作目となる本作も美しいシンセに
キャッチーなヴォーカルメロディを乗せて、爽快なフックと展開力で描かれる見事なサウンドだ。
適度なハードさと抜けの良いメロディアス性は、Neal Morseなどのアメリカ系プログレの感触であるが、
こちらはより起伏のある展開力と切り返しの多さで、知的な構築センスと緻密なアレンジが素晴らしい。
本作からシンセ奏者も替わっているようだが、ムーグシンセの音色など古き良きプログレ性がUPしていて、
バンドのカラーに上手く融合させている。ラストは27分を超える大曲で、テクニカルかつキャッチーな
このバンドの魅力がすべて詰まった軽妙な展開力が味わえる。濃密な傑作と言う他にない。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 構築センス・・9 総合・・8 過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Fish on Friday 「Godspeed」
ベルギーのプログレハード、フィッシュ・オン・フライデーの2014年作
前作はメジャー感のあるAOR的なポップ性の好作であったが、本作はのっけから10分を超える大曲で
ぐっとシンフォニックな質感が増している。透明感のあるシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せて
繊細なメロディアス性で描かれるサウンドは、YesAsiaをより美麗にしたという感触で、しっとりと味わえる。
2曲目以降も、厚みのあるシンセによるシンフォニック性と、Moon Safariを思わせる美しいコーラスなども含んだ
キャッチーなやわらかさで、とても耳心地がよい。プログレ的な展開やテクニカル性というのはあまりないのだが、
とにかく繊細にして優美な作風には心が和まされる。ゆったりとメロディックな叙情美が好きな方にはマスト。
メロディック度・・9 プログレ度・・7 繊細で優美度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Saelig Oya 「Chaos - Chaos」
フランスのプログレバンド、サエリング・オヤの2015年作
重々しいチェロの音色にフランス語の女性ヴォーカルの歌声が妖しく響き、
ハード寄りのギターが加わって、メタリックな感触を含んだダークなサウンドが描かれる。
ゴシック的な耽美な空気感と、ときにチェンバーロック的でもあるエキセントリックなセンスが合わさって、
独特の浮遊感に包まれたアンニュイな世界観が味わえる。派手な展開というのはほとんどないのだが、
けだるげな女性ヴォーカルの歌声に、うっすらとしたシンセに包まれた涼やかな感触で、
Paatosなどの、倦怠のプログレ・フィメールロックが好きな方にはけっこう楽しめるのではなかろうか。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Amberlinn 「Chasing Shadows」
オランダのシンフォニックロック、アンバーリンの2007年作
美しい女性ヴォーカルの歌声に、シンフォニックなアレンジでしっとりとした叙情を描くサウンド。
6曲入りのミニアルバムで、楽曲自体も3~4分とわりとコンパクトな聴き心地であるが、
メランコリックな物悲しさのゴシック風の感触や、アコースティック、アンビエントの要素も含んだ、
繊細な叙情美が楽しめる。All About Eveをシンフォ寄りにしたというような倦怠感と、
美しくはかなげな世界観は悪くないので、ぜひともフルアルバムで聴きたいものだ。
繊細度・・8 プログレ度・・7 女性Vo度・・8 総合・・7.5



11/26
イタリアンプログレ特集!(231)
*イタリアのプログレレビューページはこちら


The Mugshots 「Something Weird」
イタリアのプログレ・ハードロック、マグショッツの2016年作
シンセを含む5人編成で、本作はアリス・クーパーのギタリストとして知られるディック・ワグナーがプロデュース、
Death SSのフレッディ・デリリオがマスタリングを手掛けている。きらびやかなシンセにハード寄りのギターを乗せ、
キャッチーで爽快なロックのノリとプログレ的な構築性を合せたというサウンド。ヴォーカルは英語であるが、
イタリアらしいシアトリカルな濃密さを感じさせ、サーカスのような楽しげな狂気と遊び心に包まれたセンスが光っている。
ニューウェイブ的なポップ性やパンク、メタル的な要素を大胆に取り入れつつ、ときにオルガンが鳴り響く古き良きロックや、
プログレとしての味わいもしっかり残しながら、曲によってはブラックメタル的でもあるダークさも垣間見せるという。
楽曲は4~5分前後とわりとコンパクトで、ミクスチャーされた音のわりには難解さはなく、全体的にもメロディック性が強いので、
イタリアンロック好きはもちろん、多くのハードロック/メタル系のリスナーにも楽しめるのではないだろうか。
濃密なシアトリカル・ロック作品である。Deliriumのフルート、サックス奏者のマーティン・グライスをはじめ、多数のゲストが参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 シアトリカル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Presence 「Masters & Following」
イタリアのプログレ・ハードロック、プレゼンスの2016年作
デビューは1990年、4作目の「Black Opera」は日本盤も出ていたので、ご存知の方もいるのではないだろうか。
本作は、前作「Evil Rose」から8年ぶりとなる7作目。クラシカルなピアノやチャーチオルガンなど、
シンフォニックなシンセアレンジと適度にハードなギターが重なり、女性ヴォーカルの歌声が妖しく響き渡る。
JACULAなどにも通じる耽美なダークさを感じさせる世界観に、メタリックな激しさも含んだメリハリのある構成で、
ソロとしても活躍する、ソフィア・バッチーニの歌声は、楽曲にオペラ的な優雅さとシアトリカルな演劇性を付加している。
一方では、プログレ的なメロディアスな叙情ナンバーも配されていて、バンド創成期から参加するエンリコ・イーリョの
シンセワークが優美に映えている。Judas Priest“Freewheel Burning”のカヴァーも、シンフォニックかつ妖しい雰囲気で面白い。
イタリアらしい濃密な空気感とドラマ性、クラシカルな美しさとシンフォニックな華麗さが合わさったハードプログレッシブ作品である。
DIsc2には、ライブ音源を収録。初期の楽曲やオーケストラを含んだ編成の貴重なライブサウンドが楽しめる。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 濃密度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

BAROCK PROJECT 「Vivo」
イタリアのプログレバンド、バロックプロジェクトのライブ作品。2016年作
シンセにベース、コーラスもこなすルカ・ザビーニを中心にしたバンドで、現在までに4作のアルバムを発表。
本作は2015年ミラノでのライブを2CDに収録。きらびやかなシンセアレンジと、マイルドなヴォーカルを乗せた
キャッチーで軽妙なサウンドは、ライブにおいてもしっかりとした演奏力とともに、優美でメロディックな聴き心地。
ルカ氏の巧みなシンセワークを中心に、テクニカルなインストパートを含んだ、タイトなアンサンブルもさすが。
反面、深みのあるプログレが好きに方には、音が優雅に綺麗すぎて、なんとなく物足りないかもしれないが、
現在進行形のメロディック系イタリアンプログレの代表格ととして、その名に恥じないクオリティのライブ作品です。
メロディック度・・8 ライブ演奏・・8 優雅度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


YUGEN 「Death By Water」
イタリアのチェンバー・プログレ、ユーゲンの2016年作
クラシカルでアヴァンギャルドなチェンバープログレとして過去の作品はライブも含めてどれも素晴らしかったが、
スタジオアルバムとしては4作目となる本作も圧巻の仕上がりだ。たたみかける変則リズムの上に、
優雅なマリンバやサックス、トロンボーンなどが重なり、フリーキーな音色たちがときに合わさり、また離れては、
アヴァンギャルドに乱舞する。ギターはわりとハードな音で、楽曲にどっしりとした重厚さを生み出していて、
目まぐるしく変化するリズムと音圧の中で、スリリングこの上ないアンサンブルを耳で追うだけで脳が楽しい。
ザッパが本気で高度なチェンバーサウンドを追及したらこうなる…というような、MATS/MORGANも真っ青の迫力である。
コロコロとしたマリンバの響きや美しいピアノ、ときに女性ヴォーカル、スキャットなども加わった繊細さも垣間見せつつ、
優雅なエキセントリック性とシリアスなダークさが絡まり交錯するという、おそるべき芸術性に包まれた傑作だ。
テクニカル度・・9 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・9 総合・・8.5 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Deus Ex Machina 「Devoto」
イタリアのプログレバンド、デウス・エクス・マキーナの2016年作
1991年デビューのベテランで、イタリアらしいテクニカル性とアヴァンギャルドなセンスを併せ持ったスタイルで、
これまでに6枚のアルバムを発表。本作は2008年作以来となる7作目で、わりとハードなギターにヴァイオリンが鳴り、
オルガンなどを含むシンセアレンジにイタリア語による濃密なヴォーカルを乗せたサウンドで、
変則リズムを含んだ偏屈な感触に大人の渋さが加わったという、独特の聴き心地は健在だ。
とくにギターのソロなどはブルージーなロック色を感じさせるフレーズで、ジャズロック的なアンサンブルとの
面白いコントラストを作っている。オルガンが鳴り響くノリのよいナンバーなど、わりとシンプルな聴き心地で
過去の作品に比べるとアヴァンギャルド性が薄まった分、いくぶん分かりやすいかもしれない。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Deus Ex Machina 「Imparis」
イタリアのプログレバンド、デウス・エクス・マキーナの2008年作
本作はCD+DVDの2枚組で、CDにはスタジオ録音された新録曲を、DVDには2006年フランス、パリでのライブ音源を収録。
ヴァイオリンにシンセ奏者を含む6人編成で、どっしりとしたベースが支えるアンサンブルにオルガンやエレピが鳴り響き、
イタリア語の歌声を乗せた、AREAを思わせるジャズロック風味を含んだスリリングなテクニカル性で構築されるサウンド。
優雅なヴァイオリンの音色もどこか地中海的で、おおらかな叙情性を感じさせ、変拍子たっぷりのリズムに乗るギターは
大人の渋さとオールドなロック感触を漂わせる。このバンドらしいアヴァンギャルドなセンスも随所に覗かせて、
一筋縄ではいかない偏屈な展開というのは、やはり玄人好みのサウンドと言えるだろう。とっつきはよろしくないが、
抜群の演奏力で描かれる独特のアヴァンプログレが味わえる。DVDのライブ映像もファンには必見といえるだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Gecko's Tear 「Primati」
イタリアのプログレバンド、ゲッコーズ・ティアの2016年作
2005年作はテクニカルかつひねくれたメロディ展開で聴かせる、GENTLE GIANTタイプの好作であったが、
10年ぶりとなる本作も、イタリア語のマイルドなヴォーカルを乗せた優雅で軽やかなアンサンブルで、
キャッチーで叙情的でありながら、どこか偏屈な聴き心地のサウンド。ホーンセクションなどを含んだアレンジや、
とぼけた味わいのメロディアス性も含めて、やはりGGやEcholynなどに通じる玄人好みのセンスとなっていて、
適度にスリリングな味わいをかもしだしている。楽曲自体は3~5分とわりと短いので、あるいはプログレを聴かない方にも、
風変わりなメロディックロックとして楽しめるかもしれない。「イタリアのジェントル・ジャイアント」と呼ばれる日も来るかも。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 とぼけたセンス度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


L'Estate Di San Martino 「Esm #40」
イタリアのシンフォニックロックバンド、エスターテ・ディ・サン・マルティノの2015年作
70年代に活動しアルバムを残さぬまま消滅したバンドが、2007年に復活、本作は復活後3作目となるアルバム。
やわらかなフルートが鳴り響き、ピアノのつまびきに12弦ギターの響き、サックスなども加わった、
アコースティックなアンサンブルで聴かせる優雅なサウンド。シアトリカルなイタリア語の語りや、
ときに女性ヴォーカルの歌声も加わった優美な聴き心地にうっとりとなる。全体的には、12弦ギターやピアノ
サックスやフルートなどによる繊細なインストパートがメインなので、プログレ的な高揚感は薄いのだが、
アコースティックな優しさに包まれたサウンドが耳に優しい。のんびりとやわらかな叙情に浸れる好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 繊細度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Maurizio di Tollo 「Memorie Di Uno Sparring Partner」
イタリアのミュージシャン、マウリツィオ・ディ・トロの2015年作
HOSTSONATEN、LA MASCHERA DI CERAのドラマーでありシンセ奏者としても活躍するミュージシャン。
イタリア語による渋い歌声を乗せた歌ものロックを基本にしつつ、センスのよいシンセアレンジに
サックスなども加わったアダルトな雰囲気や、うっすらとメロトロンが響くプログレ風味も覗かせる。
いくぶんハードなギターも含んだ、薄暗くダークなナンバーもあったりと、アーティスティックなセンスが
シンプルに発揮された世界観で、プログレとしてはやや物足りない感じもするのだが、
ラスト曲などは繊細な叙情のシンフォニックナンバーが楽しめる。イタリアらしい一枚である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イタリア度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Bill in the Tea「Big Tree」
イタリアのプログレバンド、ビル・イン・ザ・ティーの2014年作
シンセ奏者を含む5人編成で、アコースティックギターにピアノ、ヴァイオリンの音色が重なり、
PFMを思わせる繊細な叙情性とクラシカルなで聴かせる、優美なシンフォニックロックサウンド。
ヴォーカルは英語なのだが、いくぶん野太い声質がやはりイタリアのバンドらしく、
ムーグシンセの音色など、古き良きプログレの感触と牧歌的な雰囲気に包まれている。
楽曲には適度にハードな展開もあったりと、ゆったりとしながらも案外メリハリがあって飽きさせない。
全体的に派手さはないのだが、70年代のオールドなロック感触とサイケがかった浮遊感も含んだ好作品。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


OXHUITZA
イタリアのプログレバンド、オックスヒュイッザの2013年作
オルガンやメロトロン、ムーグといったヴィンテージなシンセとわりとハード寄りのギターが合わさった、
ヘヴィプログレのアンサンブルを、わりと軽快に現代的に構築したというスタイルで、
基本はインストサウンドであるが、やわらかのピアノの音色のしっとりとしたパートから、
キャッチーなノリの良さまであって、なかなか起伏に富んだ聴き心地。
フルートが鳴り響く、妖しい雰囲気はいかにもイタリアのバンドらしいのだが、
やはり歌がない分、濃密さの点では少し物足りないか。インストもが好きな方はどうぞ。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


CATAFALCHI DEL CYBER 「BENEDIKTUS UND VOBIS QUOQUE CATAFALCUS EST TU」
イタリアのプログレバンド、カタファルキ・デル・シーベルの2011年作
MOONGARDEN、SUBMARINE SILENCEなどで活躍するCristiano Roversiが参加していて、
メロトロンが鳴り響き、クリムゾンの緊張感にジェネシスの叙情性をまぶしたという濃密な聴き心地で、
アヴァンギャルドで先の読めない展開も面白い。「カタファルキ卿の皮肉と冒涜の世界」というタイトルや、
ジャケのイメージのようなシュールな夢を見ているような感じもあるのだが、メロトロンがたっぷり鳴ると、
案外普通のシンフォニックロックとしても楽しめる。ヴォーカルのヘタウマ感がB級のイメージをかもしだしていて、
そこが良いのか悪いのか…歌詞がほとんど英語なので、イタリアらしさという点でもやや中途半端な気もするが
往年のプログレらしさとシュールなセンスを同居させた力作であるのは確かだろう。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 イタリア度・・7 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る



11/12
個人的にはRED MASQUEが好きです♪(219)


David Cross Band「Sign of the Crow」
元KING CRIMSONのヴァイオリニストとして知られるデヴィッド・クロス率いるバンドの2016年作
のっけからヘヴィなギターリフを乗せたテクニカルメタル風のサウンドでやや面食らうが、
ヴァイオリンが加わった音の厚みと、ヴォーカルを乗せたキャッチーなモダンさに包まれた
ダークなハードプログレが広がってゆく。現FROST*のドラムが叩き出すソリッドなリズムも含めて、
ときにDREAM THEATERなどにも通じるプログレメタル感触も含んだ、若いリスナーにも対応した聴き心地。
泣きのギターにヴァイオリンが重なる英国らしい叙情ナンバーもあり、モダンでヘヴィ寄りの作風の中に、
デヴィッドが描くクラシカルな美意識が見え隠れする。ハイブリッドなスタイルで作り込まれた力作だ。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 モダン&ハー度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Motorpsycho 「here be monsters」
ノルウェーのロックバンド、モーターサイコの2016年作
90年代初頭から活動するベテランバンドで、すでに何作目なのかもわからないが、
2008年以降は圧巻の傑作を出し続けている。今作はピアノによるリリカルなイントロで幕を開け、
メロウなギター、うっすらとしたシンセアレンジを乗せて、ゆったりとしたサウンドが広がってゆく。
繊細なヴォーカルの歌声も含めて、前作から続くポストプログレ風の聴き心地であるが、
存在感のあるベースを中心にしたアンサンブルと、ひとつひとつの音の重ねが説得力のある
強力なスケール感を生み出していて、じわじわとその世界観に引き込まれてゆく。
ときにアッパーなノリのあるサイケ要素も覗かせつつ、アコースティックな小曲もさらりと入れてきたりと、
バンドの懐の深さには恐れ入る。プログレファンには普通にお薦めできる力作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細で壮大度・・9 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Grand General
ノルウェーのロックバンド、グランド・ジェネラルの2013年作
シンセにヴァイオリン奏者を含む5人編成で、ドラムはMOTORPSYCHOでも活躍するメンバー。
アナログ感を感じさせるギターにヴァイオリンの音色が絡み、うねりのあるベースとドラムが
躍動的なグルーブ感を描き出す。ガレージロック的でもある生々しさとサイケな浮遊感、
プログレ的なスケール感が合わさった独自のサウンドありながら、結果してロックであるという、
説得力のある抜群の演奏は見事と言う他はない。オールインストであるが、どっしりとしたリズム隊が
重厚さと同時にノリのある緊張感わ作り出し、ヴァイオリンとギターが空間を彩る、その一体感に聴き惚れる。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 アンサンブル度・・10 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Gazpacho 「Molok」
ノルウェーのプログレ・ロックバンド、ガスパチョの2015年作
いまやkscopeレーベルを代表するバンド、本作はおそらく9作目のアルバム。
ヴァイオリン、シンセ奏者を含む6人編成で、うっすらとしたシンセアレンジにマイルドなヴォーカルを乗せ
物悲しいヴァイオリンが鳴り響く、モダンで繊細なサウンドにはいっそう磨きがかかっている。
今作ではパーカッションによる民族的な味わいも随所にあって、ヴォーカルのシアトリカルな表現力とともに、
空間的な静謐感に吸い込まれるような薄暗く神秘的な世界観を描きながら、やわらかなピアノの音色に
メロウな泣きのギター、ときに美しい女性コーラスも入ってきたりして、サウンドを優美に彩っている。
20年近いキャリアを持つバンドらしい、細やかなセンスで構築された傑作に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

The Andy Tillison Multiplex 「Electric Sinfonia 2」
イギリスのミュージシャン、アンディ・ティリソンによるプロジェクトの2014年作
The Tangentを率いるマルチミュージシャンで、本作は優雅なジャズロック風味を押し出した作品。
ギター、ベース、ドラム、シンセなど、すべての楽器を一人でこなし、カンタベリーテイストあふれる
軽妙なインストサウンドを描いている。5楽章に分かれた組曲方式の構成で、巧みなグルーブを作り出すドラムに、
やわらかなピアノ、エレピ、オルガン、ムーグシンセなどが、ときにシンフォニック的な美しさとともに楽曲を彩る。
サックスやフルートなど、ブラスや管楽器も加わって、随所にプログレらしいスリリングな展開もしっかりと織り込みつつ、
オールインストながら最後まで飽きさせない構築力はさすが。The TangentがNational Health化した、という聴き心地の傑作です。
メロディック度・・8 プログレ度・・8 優雅度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

REGAL WORM 「Use and Ornament」
イギリスのプログレバンド、リーガル・ウォームの2013年作
ヴォーカル、ギター、ベース、シンセ、ドラムを一人でこなすマルチミュージシャン、Jarrod Goslingを中心にしたバンドで、
メロトロンやオルガンが鳴り響くヴィンテージな感触と、GENTLE GIANTに通じるとぼけた味わいで構築されるサウンド。
サックスが鳴り響くブラス入りプログレに、フリーキーでエキセントリックなセンスが融合したという聴き心地で、
やわらかなヴォーカルなど、音自体はキャッチーといってもよいのだが、コロコロとした先の読めない展開が面白い。
13分、26分という大曲を、緩急自在に「これぞプログレ!」というエキセントリックなセンスで描きつつ、
女性によるスキャットや語りなどが現れるミステリアスな雰囲気も素晴らしい。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・9 軽妙で偏屈度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


AUTUMN MOONLIGHT 「Alter Reality」
アルゼンチンのシンフォニックロック、オータム・ムーンライトの2012年作
メロウなギターワークとやわらかなシンセで聴かせる、ポストプログレ的な繊細さに包まれたサウンド。
あるいはポーランドのバンドを思わせるような翳りを含んだ雰囲気と、Alcestあたりにも通じるような
シューゲイザー風味のモダンな浮遊感に包まれた叙情美がじつに耳に優しい。
プログレというよりは、薄暗系のメロウ・ロックというべきか。オールインストながら、
ギターの泣きのフレーズにピアノの音色が重なって、しっとりとしたやわらかな叙情に癒されます。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 叙情度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る



THE RED MASQUE 「FossilEyes」
アメリカのアヴァンプログレ、レッド・マスクの2008年作
前作はクリムゾン+ヤクラというようなミステリアスな作品であったが、本作も魔女めいた女性ヴォーカルの歌声に、
アコーディオンの音色が鳴り響き、ヘヴィなギターとベースが加わった重厚さとアヴァンギャルドな展開で聴かせる、
異色のサウンドを展開。紅一点、リンネッテ嬢の歌唱は、ときにヒステリックにシアトリカルになったりと、妖しさたっぷり。
ときにヴァイオリンなどのクラシカルな音色も入りつつ、あくまでアヴァンギャルドな妖しさに包まれた世界観で、
ラストの12分を超える大曲などは、Art Bears時期のダグマー・クラウゼにも通じるような狂気を含んだ歌声で、
エキセントリックなアヴァン・プログレが炸裂する。まともでない音楽が好きな方にはぜひおススメしたい力作。
ミステリアス度・・8 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


THE RED MASQUE 「Mythalogue」
アメリカのアヴァン・プログレ、レッド・マスクの2013年作
おそらくミノタウロスの伝説をテーマにした作品で、ジャケのセンスといい、相変わらずぶっとんでいるのだが、
サウンドの方も期待通り、変則リズムの浮遊感にヘタウマな女性ヴォーカルを乗せた、妖しいヘヴィプログレが炸裂。
ひねくれまくりの偏屈なアンサンブルと、先の読めないアヴァンギャルドな展開がなかなか楽しく、
ミステリアスな空気感にわくわくできる。今作では雰囲気モノとしての、静かでミニマムなパートも増えていて、
神秘的に女性声が響き渡る、幻想的な味わいに浸れるような方にはお薦めだ。たたみかけるヘヴィプログレパートとの
コントラストがくっきりとしたメリハリになっていて、ドラマティックなアヴァン・ロックが濃密に味わえる力作となっている。
ミステリアス度・・9 プログレ度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


CTHULHU RISE「42」
ウクライナのアヴァン・プログレ、クトゥルー・ライズの2012年作
バンド名のように、クトゥルー神話をテーマにしているようだが、サウンドはエレピを主体にした美しいシンセに
ややメタル寄りのギターを乗せ、アヴァンギャルドなテクニカル性と優雅なフュージョン色が合わさったというもの。
オールインストながら、切り返しやリズムチェンジの多さと、コロコロとした軽やかな質感があって、
メタリックなチェンバー・ジャズロック的にも楽しめる。重すぎない音質も、硬質過ぎずにかえって聴きやすい。
程よくテクニカルでヘンタイでありつつ、軽妙なユーモアと遊び心を感じさせる、どこか繊細なセンスも含んでいて、
楽曲も3~5分台と長すぎず、アヴァンギャルドな作品が苦手な方でもわりと楽しめるかもしれない。
本作には曲名というものがなく、それぞれ番号がふられた小曲「24~32」を収録というのも無機質で面白い。
ドラマティック度・・7 テクニカル度・・8 アヴァンギャル度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

PANTOKRAATOR 「Tormides」
エストニアのトラッドプログレ、パントクラトルの2009年作
90年代から活動するバンドで、男女ヴォーカルの母国語の歌声と、モダンなシンセアレンジで
ジャケのようなペイガン的な民族色を含んだ、ハード寄りのシンフォニックロックサウンド。
男性ヴォーカルの濃い目の歌声に比べて、線の細めの女性声はあまり前に出てこないが、
曲によってはキャッチーなポップ性もあって、VarttinaかKormoranかという辺境トラッドロックの味わいも。
ギターのメロディックなフレーズも随所に爽快で、きらびやかなシンセパートも含めて、アレンジ自体には
むしろメジャー感も漂わせているという。個人的には女性声をメインにした曲も欲しかった。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 辺境トラッドロック度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


TANTRA 「DELIRIUM」
ポルトガルのプログレバンド、タントラの2005年作
70年代から活動するバンドで、2003年の復活作「TERRA」に続く、復活2作目のアルバム。
なまりのある英語歌詞による濃密なヴォーカルとメロウなギターに美しいシンセアレンジで、
辺境的な不思議なスケール感を描く、シンフォニックロックサウンド。どこかヘンテコなセンスと
無理やり感のある展開が面白いのだが、叙情的なところはしっかりとメロディアスなので、
わりとちゃんとプログレとしても楽しめるのである。メロウな泣きのギターに、美しい女性コーラスやスキャットなども入って来て、
スペイシーな壮大さとともに辺境プログレの荒削り感が合わさったという、なかなかの力作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 辺境度・・8 総合・・7.5



11/5
今日は我がX-ROCKSのライブです!(207)


KANSAS 「The Prelude Implicit /暗黙の序曲」
アメリカのプログレハード、カンサスの2016年作
スティーヴ・ウォルシュが脱退し存続が危ぶまれたが、フィル・イハート、リチャード・ウィリアムスのオリジナルメンバーに
4人の新メンバーを加えた編成で、じつに16年ぶりとなるスタジオアルバムが完成した。
新たなフロントマンとなったロニー・プラットのマイルドな歌声を乗せて、適度なハードさとシンセによる美しいアレンジで、
ドラマティックなサウンドを構築、もキャッチーでありながら湿り気を帯びた聴き心地は、まさに多くのファンが望むカンサスの音である。
もちろんこのバンドの魅力であるヴァイオリンのも音色も優雅に鳴り響き、新たな息吹を得たというべきシンフォニック寄りの作風から、
大人の味わいなやわらかな歌ものナンバーまで、じっくりと楽しめるクオリティの高さはさすがという他はない。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 カンサス度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る


Frequency Drift 「Last」
オランダのプログレバンド、フリクエンシー・ドリフトの2016年作
女性Vo、女性ハープ奏者を含む6人編成で、しっとりとした翳りのある叙情性と
いくぶんハード寄りのギターが加わった、重厚な世界観も含んだシンフォニックロック。
アンニュイな繊細さをかもしだす、新たに加わったMelanie嬢の歌声もやわらかに耳心地よく、
随所に響くハープの優雅な音色も、浮遊感ある幻想性に包まれて聴こえる。
メロトロンが鳴り響く北欧プログレ的な涼やかさと、メランコリックな情感で構築される、
美意識あふれるサウンドだ。PaatosやWhite Willowなどが好きな方にもお薦めできる。
一方でモダンなハードプログレの側面としては、Riversideなどに通じる部分もあったりする。
ドラマティック度・・8 薄暗度・・8 女性Vo度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

KAYAK「Cleopatra - The Crown of Isis」
オランダのプログレバンド、カヤックの2014年作
1973年にデビューしてから、何度かの活動休止をはさみつつも活動を続ける、オランダを代表するベテラン。
今作はタイトルのように古代エジプトをテーマにしたCD2枚組の大作。美しいシンセアレンジに包まれて、
艶やかなヴァイオリンの音色にメロウなギターのトーンが重なるイントロからして、もうウットリである。
女性ヴォーカルの歌声でしっとりと聴かせるところは、初期のQUIDAMのように優美な雰囲気で、
マイルドな男性ヴォーカルも、今回は壮大な物語を語るようなイメージだ。いつもの歌もの路線から、
本格派のシンフォニックにシフトしたという作風であるが、持ち味であるキャッチーな感触もしっかり残している。
小曲主体のDisc2を聴くと、2枚組にする必要があったのかと思うが、壮麗でゴージャスなアレンジと
優雅なメロディアス性で描かれる、ドラマティックな力作であるには違いない。
ドラマティック度・・8 シンフォニック度・・8 壮大度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Jerusalem 「Cooler Than Antarctica」
ブリティッシュロックバンド、エルサレムの2016年作
2009年にじつに37年ぶりとなる復活作を発表して驚かせたが、本作は復活後の3作目となる。
今作でもジェフ・ダウンズ(ASIA)、ニック・ディヴァージリロ(SPOCKS BEARD)が参加していて、
古き良き感触のギターに、唯一のオリジナルメンバーであるリンデン・ウィリアムズの味わいのある歌声を乗せた
渋みのあるハードロックサウンドを聴かせる。70年代英国らしいオルガンの響きに、随所にウェットな叙情も含んだ
キャッチーなナンバーもあって、ゆったりと味わえる優しい耳心地である。オールドな空気感を再現しつつも、
随所にゲストによるヴァイオリンや女性コーラスを含む厚みのあるサウンドに適度なモダンさもあって、
バンドとしての新たな息吹をちゃんと感じさせる。そういう点でも意義ある復活といえるだろう。
メロディック度・・8 古き良き度・・8 英国度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Lucifer's Friend 「Banquet」
ドイツのハードロック、ルシファーズ・フレンドの1974年作
のちにURIAH HEEPへ加入する、ジョン・ロートンが在籍していたことでも知られるバンドで、
1stのオルガン入りハードロックから、2ndのプログレッシブ路線とアルバムごとに雰囲気を変えているのだが、
4作目となる本作は、のっけから12分を超える大曲で、やわらかなエレピにメロディックなギターが絡み、
優雅なアンサンブルを描きながら、前作にもあったブラスセクションをより大胆に取り入れている。
ストリングスも加わった厚みのあるアレンジは、ときにシンフォニックですらあって、プログレファン向けの聴き心地。
ヴォーカルメロディのキャッチーなフックはQUEENを思わせたりと、確信犯的なアレンジ力の高さも素晴らしい。
メロディック度・・8 シンフォニック度・・8 優雅度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Lucifer's Friend 「Mind Exploding」
ドイツのハードロック、ルシファーズ・フレンドの1976年作
以前は貴重だったバンドのアルバムが2015年リマスター再発。5作目となる本作は、ジョン・ロートン在籍の最後のアルバム。
前作のゴージャスな路線から打って変わり、比較的シンプルな楽曲で、80年台へと通じるようなキャッチーで
スタイリッシュなサウンドになっている。マイルドかつ伸びやかな歌声をメインにしたメロディックな叙情性に、
フルートやブラスなどを含んださりげないアレンジも気が利いている。ときにQUEENのような繊細なポップ性も垣間見せるなど、
多くのロックファンが楽しめる作風で、もともと高かった演奏力にもさらに磨きがかかっていて、
英米のメジャーバンドと比較してもまったく遜色ないレベルである。バンドのひとつの到達点だろう。
メロディック度・・8 キャッチー度・・8 アレンジセンス・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Ian Matthews 「 If You Saw Thro' My Eyes」
英国のフォークシンガー、イアン・マシューズの1971年作
初期のFairport Conventionにも参加したシンガーの1stソロ。アコーステッィクギターのつまびきに、
エレキギターやドラムの入ったロック色も含んだ作風で、マイルドなヴォーカルが耳心地よい。
キース・ティペット、リチャード・トンプソン、サンディ・デニーなどが参加していて、
随所に男女ヴォーカルを乗せた、英国らしい優雅な牧歌性に包まれている。
優美なピアノのつまびきに、アコースティックギターがかさなるナンバーなどもじつに美しい。
全体的に素朴な味わいながら、優しい歌声と繊細な感性にあふれた逸品です。
アコースティック度・・7 フォーク度・・8 英国度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Ian Matthews 「Tigers Will Survive」
イアン・マシューズの1972年作
前作同様にやわらかなヴォーカルと、エレキギターを含んだ適度なロック色で聴かせる、
いわゆる非トラッド系のフォークサウンドに、今作ではいくぶんカンタトリー風味が加わっていて、
ゆったりとしたおおらかな雰囲気に包まれている。ゲストのリチャード・トンプソンによる
アコーディオンのやわらかな音色も耳に心地よく、繊細で温かみのある叙情性は、
古き良き英国の田舎の空気を感じさせる。サックスが入った哀愁を感じさせるナンバーもありつつ
あくまで素朴な情緒を大切にする作風に、彼の人柄がにじみ出ているように思う。
アコースティック度・・7 フォーク度・・8 英国度・・9 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


VA/ The Stories of H.P. Lovecraft a SyNphonic Collection
フィンランドのファンジン「COLOSSUS」による、H.P.ラヴクラフトの「クトゥルー神話」をテーマにしたオムニバス。2013年作
CD3枚組で、参加バンドは…SAMURAI of PROG、GLASS HAMMER、KARDA ESTRA、UNITOPIA、DACCORD、SITHONIA、DAAL、
La Coscienza di Zeno、SIMON SAYS、Guy LeBlanc(NATHAN MAHL)、AETHER、NEXUS、JINETES NEGROS、CICCADA 他…といったディープな面々。
中でもグラス・ハマーは、クトゥルーをテーマにしてもさすがの美しさで、オルガン鳴り響く壮麗なシンフォニックロックを披露、
ダークなチェンバーロックのカルダ・エストラはまさにこのテーマにうってつけ。ユニトピアはキャッチーで爽やかなシンフォ好曲で、
北欧のシモン・セッズは、メロウなギターに美麗なシンセでダイナミックかつダークな大曲を構築。コシエンザ・ディ・ゼノは、
イタリア語のヴォーカルを乗せ、メロトロンにオルガン、ムーグシンセが鳴り響く、ヴィンテージなプログレサウンド。
故ギー・ルブランはやわらかなシンセにメロディックなギターが絡む叙情的なインストナンバー、ヴァイオリン鳴り響く優雅なチッカーダ、
ダッコルドもオルガンをバックにメロウなギターで薄暗い叙情を描く、古き良きプログレ感触の大曲。イタリアのシトニアやダールは、
真面目にダークな暗黒美を楽曲で表現しようとしていて良い感じです。南米のネクサス、エーテルも叙情たっぷりのシンフォサウンド。
クトゥルー云々を抜きにしても、どの楽曲もなかなか出来が良く、世界中のシンフォ系プログレが楽しめる好盤です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ダーク度・・7 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

HAPPY THE MAN「BETTER LATE...」
アメリカのプログレバンド、ハッピー・ザ・マンの3rd。1979年作
軽妙なテクニカルシンフォの傑作である、2nd「CRAFTY HANDS」の完成度には唸らされたが、本作も決してひけをとらない。
サウンドはぐっとやわらかになり、美しいシンセアレンバを中心にした聴き心地は、いくぶん落ち着いたような雰囲気であるが、
よくよく聴けば、その抜群の演奏力とマイルドな優雅さを表現するアンサンブルは職人の域に達していて、
やわらかなヴォーカルを乗せたナンバーも、しっとりとした叙情美に引き込まれる。前に出すぎないギターも何気に絶妙で、
もはやテクニックなどは見せびらかすものではないとでも悟っているかのようである。なんてハイセンスなバンドだろうか。
お前ら本当にアメリカ人なのか?…などと突っ込みたくなるほど。ジャケは地味ながら内容は極上。プログレらしさは薄めながら、
ジャズやフュージョン的なメロディアス性でじっくりと楽しめる、素晴らしいシンフォニックロック作品である。必聴ですわ!
メロディアス度・・8 プログレ度・・7 演奏センス・・9 総合・・9 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る Amazon.MP3

LINDSEY BOULLT 「Composition」
アメリカのギタリスト、リンゼイ・ボルトの2007年作
元MAHAVISHNU ORCHESTRAのジェリー・グッドマン、スチュアート・ハム、デレク・シェリニアンなどが参加、
メタリックな硬質感とフュージョン的な優雅さを合わせたインストサウンドで、PLANET Xに通じる聴き心地。
随所に12弦ギターなどを含んだアコースティックな要素も含んだ見事なギターワークに、
手数の多いドラムとどっしりとしたベースの存在感とともに、骨太のアンサンブルを描いてゆく。
ヴァイオリンが鳴り響くジャズロック風味や、エスニックなメロディを取り入れた感触もあって、
オールインストながら難解さはなくわりと耳に入りやすい。インストのプログレ・フュージョンが好きな方へ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・8 優雅度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Steam Theory 「Enduring Delirium」
アメリカのミュージシャン、Jason Denkevitzによるソロユニット、スチーム・セオリーの2010年作
いかにも自主制作らしい、簡素な紙ジャケ&CD-R仕様の作品であるが、内容の方はこれがなかなか悪くない。
ゆったりとしたランドスケープ的なギターサウンドから、リズムが加わると、軽やかなフュージョンプログレになり、
テクニカルなリズムチェンジを含みながら、メロディックなフレーズを奏でるギタープレイは巧みなセンスが光る。
うっすらとしたシンセアレンジも含めて、HAPPY THE MANのような聴き心地もあって、プログレリスナーならば普通に楽しめる。
アコースティックな繊細な優雅さも含めて、全体的にもメロディックな叙情が前に出ているので、オールインストながらも
優美なテクニカル系シンフォプログレとして鑑賞できる。自主制作もあなどれないと思わせる高品質な作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 叙情度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Steam Theory 「Helios Rider」
アメリカのミュージシャン、Jason Denkevitzによるソロユニット、スチーム・セオリーの2013年作
前作同様に、シンフォニックな叙情性を含んだ軽妙なフュージョン・プログレという作風で、
適度なテクニカル性と、オールインストながらもメロディセンスに優れた聴きやすさが魅力。
アコースティック要素も含ませた繊細なギタープレイには、自主制作の知名度の低さに反して、
一流の技術とアレンジ力を有したミュージャンであることが察せられる。ギター、ベース、シンセ、ドラムと、
すべてを一人でこなすマルチミュージシャンぶりと、巧みな演奏力と楽曲の完成度の高さを考えれば、
もっと広く知られてしかるべき人物だろう。前作同様に、インスト系フュージョン・プログレの好作品だ。
メロディック度・・8 テクニカル度・・7 叙情度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Dream Aria 「In the Wake」
カナダのシンフォニックロック、ドリーム・エラの2005年作
デジタルなリズムに、うっすらとしたシンセアレンジと浮遊感ある女性ヴォーカルの歌声、
ギターも加わったロック色が合わさった、エレクトロなシンフォニックロックというようなサウンド。
オペラティックなソプラノ女性ヴォーカルの美しさを前面に出しつつ、フルートやバグパイプの音色など
ケルティック/民族的な要素や、曲によってはゴシック的な耽美な雰囲気も覗かせる。
クラシカルな優雅さをモダンに解釈したというような、シンフォニックかつキャッチーな聴き心地と
魅力的な女性ヴォーカルで、このモダンシンフォ路線をさらに追及すると面白に存在になりそうだ。
ドラマティック度・・7 優雅度・・8 女性Vo度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る




10/16
オムニバスものもよいですよ♪(193)


VA/ The SAMURAI of Prog 「Lost And Found」
フィンランドのファンジン「COLOSSUS」の編集者にして、COLOSSUS PROJECTでも活躍するメンバーと
フランスMusea Recordsとの共同企画によるユニットの2016年作
アメリカンプログレ黄金期の再現を目指すというコンセプトで、CD2枚組で濃密なサウンドが繰り広げられる。
1曲目はPAVLOV'S DOGの1stのナンバーを当時のギタリスト、スティーヴ・スコルフィナが参加してアレンジ、
美しいヴァイオリンにフルート、ピアノ、オルガン、ムーグシンセなどが合わさった、きらびやかに仕上がりだ。
アメリカのLIFTの未発曲では当時のシンセ奏者がアレンジ、メロトロンが鳴り響きメロウなギターで聴かせる、
20分を超える優美な大曲に。CATHEDRALの前身バンド、ODYSSEYの未発曲では、カテドラルのシンセ奏者が参加、
ヴォーカルにはYESのジョン・ディヴィソンが参加し、イエスばりのキャッチーな聴き心地が楽しめる。
Disc2には、QUILLの未発曲で、なんと57分に及ぶ全1曲。クイルのシンセ奏者とシンガーも参加して、
きらびやかなシンセとヴァイオリン、マイルドなヴォーカルを乗せてドラマティックな組曲が広がってゆく。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 往年のアメリカンシンフォ度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

VA/ GIALLO! “One Suite for the Murderer”
フィンランドのファンジン「COLOSSUS」による企画アルバム。2008年作
ダリオ・アルジェント監督の1975年の映画「PROFONDO ROSSO(DEEP RED)」をコンセプトにしたコンピ作品。
TILIONのシンセ奏者Alfio Costaを中心にしたユニット、DARK SESSIONをはじめ、LEVIATHAN、FLOATING STATEと
イタリア系のバンドが参加している。イントロとアウトロにアルフィオ・コスタによるシンセ小曲を配置し、
それぞれのバンドは20分を超える大曲を演奏。DARK SESSIONは、オルガンやメロトロンなどのシンセとともに
バレット・ディ・ブロンゾなどを思わせる、ミステリアスな空気感に包まれた濃密なプログレ大曲を聴かせる。
LEVIATHANは、ムーグやオルガンなどのシンセにメロウなギター、女性ヴォーカルの歌声も加わる優雅な耳心地。
FLOATING STATEは、イタリア語のマイルドなヴォーカルとやわらかなシンセによる叙情性と妖しい薄暗さを含んだサウンド。
どれもプログレらしい展開が楽しめ、この手のコンピものにしては、イタリアらしさという統一感があるのもよいですね。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

VA/ The SPAGHETTI EPIC 2「The Good, the Bad and the Ugly」
MUSEAレーベルによるオムニバスで、イタリアの西部劇「続・夕日のガンマン」をテーマにした作品。2007年作
イタリアのRANDONE、TILION、イギリスのLA VOCE DEL VENTOの3バンドが、それぞれ25分前後の大曲で参加。
RANDONEは、やわらかなオルガンにメロトロン、メロウなギターにサックスなどが加わり、イタリア語の歌声とともに
叙情豊かなサウンドを聴かせる。LA VOCE DEL VENTOは、Guy ManningとAndy Tillison(The Tangent)によるユニットで、
ムーグシンセにオルガンを響かせながら、軽妙で優雅なアンサンブルを描くところはやはり英国らしい。
TILIONはメロトロンが妖しく鳴り響き、いくぶんダークなミステリアス性と、テクニカルな展開力で構築される、
叙情性とエキセントリックなセンスが合わさった濃密なプログレが楽しめる。マカロニウエスタンとプログレという、
なんの脈絡もない発想と強引さが、いかにもイタリアらしいオムニバス。75分間、プログレ好きなら普通に楽しめます。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

VA/ The COLOSSUS OF RHODES “The Seventh Progressive Rock Wonder”
MUSEAレーベル主催、イタリア映画「ロード島の要塞」をテーマにしたオムニバス。2005年作
イタリアから、LEVIATHAN、GREENWALL、MAD CRAYON、REVELATION、スウェーデンから、SINKADUS、
VELVET DESPERADOSといったバンドが参加し、それぞれ25分前後の大曲をCD2枚に収録。
LEVIATHANは、やわらかなフルートの音色に、ムーグを含むきらびやかなシンセが鳴り響き、イタリア語のヴォーカルを乗せた
キャッチーなシンフォニックロック。GREENWALLは、ストリングスを含むクラシカルなアレンジにオルガンなどのシンセと、
女性ヴォーカルの歌声が加わった、優雅で軽妙な聴き心地で、コテコテなプログレでない感じがむしろ新鮮だ。
SINKADUSは、メロトロン鳴り響きメロウなギターを乗せた、いかにも北欧らしい叙情性にうっとり。
MAD CRAYONもメロトロン入りで、アコースティカルなパートも含むメリハリのある構築力が見事。
VELVET DESPERADOSは、オルガンやムーグシンセのレトロな感触に、サックスやトランペットなど、ホーンセクションを加えた、
ジャズロック風味の大人のプログレが楽しめる。REVELATIONは、Genesisタイプのサウンドで、歌詞も英語なのでイタリア色は薄いが、
優美なメロディアス性と繊細な聴き心地で29分を超える大曲を描いている。映画を知らずとも、ドラマティックなプログレが楽しめるオムニバスである。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

ROBERT WEBB 「Liquorish Allsorts」
イギリスのミュージシャン、ロバート・ウェッブの2014年作
ENGLANDのシンセ奏者として知られるアーティスト、1974~2014年までの間に録音された楽曲を収録。
オルガンやメロトロン、ムーグなどの古き良きシンセに、やわらかなヴォーカルを乗せた、
Barclay James Harvestあたりを思わせる牧歌的な叙情性に包まれた聴き心地
2~4分の小曲を中心に、シンフォニックな叙情ナンバーから、ミニマムなインスト曲、
女性声入りのアダルトなポップナンバーなど、統一感はさほどないが、優雅で繊細な感触は、
やはりイングランドに通じる部分もある。プログレというよりは、英国の鍵盤奏者の小品集という趣か。
世界各国のゲストが多数参加しており、その中にはKENSOの清水氏の名前もある。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 イングラン度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Fantasy 「Beyond the Beyond Plus...」
イギリスのシンフォニックロック、ファンタジーの1974年作
1974年に録音された2作目となるはずだった未発音源で、1992年にCD化されたものをジャケを変え、
ボーナストラックを加えて1999年に再発されたもので、さらにそれが2015年にリマスター再発された。
やわらかなオルガンにメロトロンが鳴り響き、マイルドなヴォーカルを乗せた牧歌的なサウンドは、
アコースティックなフォークロック風味もありつつ、随所に泣きのメロディを奏でるギターも含めて、
GENESISを思わせるシンフォニックな感触もある。ときおり壮麗な盛り上がりを見せる楽曲は、
未発作とはいえ、むしろ1973年の1作目より上なのではと思わせる。英国らしいウェットな叙情と
バンド名通りに幻想的な雰囲気に包まれた、牧歌系シンフォニックロックの好作品である。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 英国度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Efterklang 「Piramida」
デンマークのポストロック、エフタークラングの2012年作
4作目となる本作も、多重シンセによる空間的な音作りと、やわらかなヴォーカルを乗せた
アンビエントなサウンドで、ドラムのリズムによるロック色を融合させた絶妙のサウンド。
デジセリィなモダンさとオーケストラルなアレンジを混在させたセンスの良さは見事で、
クラシカルでエレクトロな感触も含んだ、ポストプログレとしても楽しめるだろう。
サックス、トランペットなどの管楽器の響きが哀愁をともなってサウンドに混ざり込み、
シンフォニックでもあるシンセに包み込まれる、美しくもメランコリックな味わいが楽しめる。
クラシカル度・・8 プログレ度・・7 壮大度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Efterklang & Danish National Chamber Orchestra「Performing Parades」
デンマークのポストロック、エフタークラングのライブ作。2009年作
デンマーク国立室内管弦楽団を引き連れて、2007年作「Parades」を完全再現した、
2008年のノルウェーでのライブを収録。鍵盤二人に、ベース、ギター、ドラム、トロンボーン、
ヴァイオリン、コーラス奏者、そしてオーケストラをバックにした大がかりな編成でのステージで、
シンフォニックな音の厚みと作品の持つスケール感までも再現した見事な演奏を繰り広げる。
重ねられた混声コーラスに、ストリングスを含む管弦楽が、優雅にサウンドを包み込み、
クラシカルなチェンバーロックを壮大なシンフォニック性で味付けしたという、素晴らしいライブが楽しめる。
シンフォニック度・・9 クラシカル度・・8 壮大度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


MODEST MIDGET 「The Great Prophecy of a Small Man」
オランダのプログレバンド、モデスト・ミッドゲットの2010年作
アメリカのバンドに近いキャッチーなポップ性を、エキセントリックなセンスで仕立て上げたというスタイルで、
サックスやヴァイオリンなどが加わったアレンジに、ときにカントリーやファンクなどの要素も合わさった、
とぼけた味わいの聴き心地だ。メロディックなギターフレーズを含んだ、優雅で叙情的なインストパートや、
アコースティカルな哀愁を描くナンバーなど、楽曲は2~5分前後とわりとコンパクトなのだが多様な感触を覗かせる。
艶やかなストリングスを乗せたやわらかな歌ものナンバーなどは、プログレというよりもQUEENのような繊細な耳心地。
かと思いきや、アヴァンプログレ風の軽妙なインストナンバーも現れてなかなかあなどれない。優雅でポップな異色作。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 優雅なセンス度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


BEARDFISH 「The sane Day」
スウェーデンのプログレバンド、ベアードフィッシュの2005年作
本作は2作目で、CD2枚組の大作。ブルージーなレトロロックという印象だった1stから、
オルガンを含むシンセが前に出て来て、ぐっとプログレ寄りの作風になっている。
マイルドなヴォーカルを乗せた北欧らしい涼やかな叙情性とキャッチーなフックもありつつ、
サイケな感じのジャケが示すように、構築的すぎない適度なユルさがとぼけた味わいになっている。
巧みなインストパートは、ときにThe Flower Kingsを思わせる部分もあるが、こちらはさらに70年代ルーツの
ヴィンテージロック感漂わせていて、ブルージーなアンサンブル感を北欧プログレで解釈したというべき力作である。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・8 ヴィンテージ度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


PERSEPHONE'S DREAM 「Pan: An Urban Pastoral」
アメリカのプログレバンド、ペルセフォネズ・ドリームの2010年作
90年代から活動するバンドで、本作は多言語による語りから始まるコンセプト的なアルバム。
オルガンやムーグを含むシンセを乗せた、プログレらしい軽妙なリズムのインストパートを中心に、
4曲目からは美しい女性ヴォーカルの歌声が加わって、とたんな優美な空気に包まれる。
ややクセのある男性ヴォーカルも加わって、ツインヴォーカルになるのかと思いきや、
コンセプト的な流れがかえって盛り上がり切らない散漫な感じになってしまっていて、
1分前後の小曲をはさんだ構成も微妙に楽曲ごとの焦点がぼやけた印象だ。
これならいっそ、女性声の美しさをもっと活かす作風にシフトしてもいいような気が。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 楽曲・・7 総合・・7
Amazon.co.jpで詳細を見る

Peter Primamore 「Grancia」
アメリカのミュージシャン、ピーター・プリマモアの2006年作
ヴァイオリンやチェロなどのストリングスを含むアレンジで聴かせる、優雅なシンフォニックロック。
SAGRADOあたりに通じる、適度な民族色とクラシカルな美しさが合わさったインストサウンドで、
やわらかなフルートやピアノの音色にアコースティックギターが絡む、とても繊細な耳心地である。
ハープのつまびきも優美な小曲など、プログレというよりはむしろクラシック寄りの感じだが、
曲によってはドラムやギターの加わったロック色もあり、Enidあたりが好きな方ならそれなりに楽しめる。
わざわざSACD仕様で発売したのも、音質的なこだわりがあるのだろう。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 優雅な叙情度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


Parzival 「Barock」
ドイツのフォークロック、パルツィヴァルの1973年作
アコースティックギター、マンドリンのつまびきに、うっすらとメロトロンが重なり、
マイルドな男性ヴォーカルに女性コーラスも加わって、牧歌的な聴き心地でありながら、
ヴァイオリンやフルートも加わった、音の厚みも感じさせるフォークロックサウンド。
中世を思わせる優雅な世界観は英国のGRYPHONなどにも通じるが、キャッチーなノリの良さと、
いくぶん田舎臭いおおらかさがこちらは強いかもしれない。バンドはこの2作目を最後に消滅。
長らく貴重な作品だったが、2016年に日本盤SHM-CD仕様でめでたく再発された。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 フォークロック度・・8 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る




10/8
秋のイタリアンプログレ♪(280)


Ingranaggi Della Valle 「Warm Spaced Blue」
イタリアのプログレバンド、イングラナッジ・デラ・ヴァッレの2016年作
十字軍遠征をテーマにした個性的な力作であったデビュー作に続く2作目で、本作では「クトゥルー神話」をテーマにしている。
メロトロンやオルガンといったヴィンテージなシンセにフルートの音色、随所に艶やかなヴァイオリンが加わって、
チェンバープログレ的でもあるミステリアスな雰囲気が広がってゆく。メロトロンやピアノをバックに薄暗い叙情を描くところは、
AnekdotenやAnglagardなどの北欧プログレの空気感にも通じるが、タイトで軽妙なドラムを中心にしたアンサンブルには
Arti & Mestieriのようなジャズロック的な優雅さも感じさせる。そして今作では、イタリア語ではなく英語歌詞であるので、
北欧的な翳りと優雅な英国カンタベリー風味、そしてイタリアらしい濃密さが混在したような絶妙なサウンドとなっている。
10分前後の大曲を、緩急自在の展開でスリリングに聴かせるアレンジセンスと、それを支える確かな演奏力も素晴らしい。
メロトロンとヴァイオリンが鳴り響く叙情性に、ヘヴィプログレの濃密さとテクニカルな構築性が融合した見事な傑作である。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・9 構築センス・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Syndone 「Odysseas」
イタリアのプログレバンド、シンドーネの2014年作
90年代にデビュー、ネオ・イタリアンプログレの代表として活動し、2010年の復活以来は順調に作品を発表、
5作目となる本作は、タイトル通り、オデュッセウスの叙事詩をコンセプトにしたスケールの大きな作品となった。
U.K.のツアードラマーなどで活躍する、マルコ・ミンネマンが参加していて、タイトなリズムを中心にしたアンサンブルに
オルガンやメロトロンを含む古き良きプログレの感触に、軽やかなヴィブラフォンの音色などを乗せ、
ときにストリングスを含むオーケストラルな美しさも含みつつ、流れるように楽曲は展開してゆく。
イタリア語のヴォーカルでゆったりと聴かせる、アコースティカルで牧歌的な感触もあったり
サックスなどのホーンセクションをまじえたナンバーなど、ベテランらしい幅の広い楽曲アレンジが見事。
クラシックやジャズなどの要素をさらりと取り入れる懐の深さと、プログレらしさをしっかり両立させた傑作です。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・8 総合・・8 *過去作のレビューはこちら
Amazon.co.jpで詳細を見る

Syndone 「Eros & Thanatos」
イタリアのプログレバンド、シンドーネの2016年作
詩人にして哲学者のグイド・チェロネッティが翻訳したヘブライ語聖書の詩編を取り上げたコンセプトであるらしい。
オルガンやムーグシンセが鳴り響き、変拍子を含んだ軽快なリズムと、メリハリのあるサウンドで、
プログレらしい屈折感もありながら、イタリア語のヴォーカルをじっくりと聴かせる大人の叙情性を含ませた
オペラ風味のドラマ性も感じさせる。ときに優雅なヴィブラフォンが彩りを加え、壮麗なオーケストラアレンジも加わった
きらびやか優雅さも魅力的だ。80年代ルーツのネオプログレを正統的に進化させ、スタイリッシュに昇華したというべき、
深みと芸術的な説得力の備わった傑作だ。スティーブ・ハケット、レイ・トーマス(The Moody Blues)がゲスト参加。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Zuffanti & ZBAND 「Il Mondo Che Era Mio」
イタリアのプログレアーティスト、ファビオ・ズッファンティのライブ。2015年作
LA MASCHERA DI CERA、HOSTSONATEN、FINISTERREなどで活躍するイタリア・ネオプログレ界の旗手、
本作は2014年のスタジオライブの音源を収録。シンセにフルート&サックス奏者を含む5人編成で、ファビオはベースを担当。
2014年のソロ作「4人目の犠牲者」からのナンバーをはじめ、フィニステッレやホトスソナテンのナンバーも演奏している。
やわらかなフルートが鳴り響き、叙情的なギターフレーズと美しいシンセを乗せた軽やかなアンサンブルで、
躍動感と優雅さを兼ねそろえた巧みなライブ演奏を聴かせてくれる。カンタベリー/ジャズロック的な軽妙さと、
シンフォプログレとしての美意識を感じさせる繊細な楽曲アレンジも見事というほかない。泣きまくりのギターと
メロトロンの音色を含むキーボードのセンスも素晴らしい。プレイヤーとしても一流であることを見せつけるライブ作品だ。
ライブ演奏・・9 プログレ度・・8 優雅な叙情度・・9 総合・・8.5
Amazon.co.jpで詳細を見る

Zuffanti 「La Quarta Vittima」
イタリアのプログレアーティスト、ファビオ・ズッファンティの2014年作
本作はドイツの作家、ミヒャエル・エンデの小説「鏡の中の私」にインスパイアされたという作品。タイトルは「四人目の犠牲者」
イタリア語の語りによるイントロから、オルガンやフルートが鳴り響く、マスケーラ・ディ・セラなどを思わせる、
ミステリアスな雰囲気に包まれたサウンドが展開される。うっすらとしたメロトロンの薄暗い叙情美と、
ムーグシンセなどのヴィンテージな感触に、エキセントリックなドラマ性を感じさせる空気感がじつにイタリアらしく、
ホラー系のサントラにも通じる確信犯的な聴き心地。サックスやピアノによる優雅なジャズ色も随所に含んだ大人の味わいは、
おそらくファビオ自身のキャリアの成熟も表しているのだろう。メロトロンにかぶさるメロウなギターフレーズなど、
シンフォニックな要素もしっかりと織り込まれていて、落ち着いて鑑賞できるイタリアン・シンフォの逸品に仕上がっている。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Goblin Rebirth
イタリアのプログレバンド、ゴブリン・リバースの2015年作
Goblinの黄金期のメンバーであった、ベース、ドラムを中心にしたゴブリンの分派バンドで、
かつてのゴブリンのホラーサントラ作品をイメージさせる、薄暗い雰囲気に包まれた感触で、
ピアノやオルガンなどのシンセに、適度にハードなギターが重なる厚みのあるサウンドを聴かせる。
架空の映画をイメージしたという疑似サントラ的な作りなので、オールインストではあるが、
スリリングでドラマティックな空気感に包まれている。技量のあるリズムセクションはさすがで、
ときにシンフォニックなシンセの重ねや、叙情的なフレーズをかぶせるギターのセンスもかなりのもの。
巧みな演奏力と音質の良さも手伝って、往年のゴブリンファンも満足させるレベルの内容であろう。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 ゴブリン度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る

Lanzetti / Roversi 「Quasi English」
NANGALA VALLIS、MOONGARDEN、THE WATCHなどに参加したシンセ奏者、クリスティアーノ・ロベルシと、
ACQUA FLAGILE、PFMなどに参加したヴォーカリスト、ベルナルド・ランゼッティのユニット。2015年作
MOON GARDENやROSENKREUZなどのメンバーがゲスト参加。サウンドは枯れた味わいのヴォーカルを乗せた、
キャッチーな聴き心地で、中期GENESISあたりに通じるポップ性と、アダルトなロック色が合わさったという雰囲気。
シンプルな歌ものかと思いきや、オルガンやメロトロンが鳴り響き、メロウなギターが加わった往年のGENESISばりの
シンフォニックなナンバーや、大人の哀愁を感じさせる叙情曲など、なかなか多彩な聴き心地で楽しめる。
GENTLE GIANTのカヴァーもマニア好みの選曲。世代を超えたユニットによる、イタリアシーンの面白さを伝える一枚だ。
メロディック度・・8 プログレ度・・7 イタリア度・・7 総合・・7.5
Amazon.co.jpで詳細を見る


MALAAVIA 「Frammenti Compiuti」
イタリアのシンフォニックロック、マラヴィアの2014年作
本作は3作目であるが、聴くのは2004年の1st以来。B級シンフォ臭をただよわせるジャケからしてよい感じだが、
サウンドの方も、ピアノやメロトロン、ムーグなどのやわらかなシンセアレンジにフルートの音色と
メロウなギターで聴かせる、繊細なシンフォニックロック。ややヘタウマな男性ヴォーカルの歌声は
イタリア語の響きとともに哀愁の叙情を感じさせ、アコースティックな民族色も覗かせるサウンドにマッチしている。
ときに女性ヴォーカルも加わった優美な聴き心地にうっとり。楽曲は4~5分台が中心でわりとコンパクトで、
プログレ的な展開というよりは、やわらかな叙情美とシンセによる美しさが前に出ていてゆったりと鑑賞できる。
シンフォニック度・・8 プログレ度・・7 繊細な叙情度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


ASTROLABIO 「L'isolamento Dei Numeri Pari」
イタリアのプログレバンド、アストロラビオの2014年作
フルートが鳴り響き、ムーグなどを含むシンセにイタリア語による粗野なヴォーカルを乗せて、
70年代を思わせる混沌としたプログレサウンドを展開。ハードめのギターにはねるリズムで、
KING CRIMSONがイタリア化したという感じもあったりと、往年のヘヴィプログレの質感を、
そのまま濃密にアップデートしたというサウンドが楽しめる。曲間に小曲をはさんだり、
あえて空白トラックを入れた構成にもこだわりが感じられ、流れのあるドラマ性を構築している。
後半には10,分を超える大曲もあり、ゆったりとした叙情を描くところも大人の余裕を感じさせる。力作。
ドラマティック度・・8 プログレ度・・8 イタリア度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Humana Prog 「Fiori Frutti Farfalle」
イタリアのプログレユニット、ヒューマナ・プログの2014年作
マクソフォーネに楽曲提供したミュージシャンとしても知られる、Paolo Farinaを中心にしたユニットで、
そのMAXOPHONEのSergio Lattuadaなどが参加。のっけから20分の大曲で、アコースティックギターのつまびきに
やわらかなフルート、ヴァイオリンの音色が重なり、イタリア語のヴォーカルを乗せた、優美な叙情が広がってゆく。
美しいシンセアレンジに、タブラのリズムなども含んだ民族色が合わさった、牧歌的なシンフォニックロックが楽しめる。
2曲目以降は、3~4分前後のシンプルなフォークロックで、プログレとして聴くには少し物足りなさもあるのだが、
地中海的な優雅なアコースティックサウンドが好きな方には心地よいサウンドだろう。
ドラマティック度・・7 優美な叙情度・・8 イタリア度・・8 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


Greenwall 「Zappa Zippa Zuppa Zeppa!」
イタリアのプログレバンド、グリーンウォールの2014年作
2005年作「From The Treasure Box」は、女性声を乗せた軽妙なシンフォニックロック作であったが、
9年ぶりとなる本作も、美しい女性ヴォーカルのイタリア語の歌声に美麗なシンセアレンジとともに、
しっとりと聴かせる繊細なサウンドだ。やわらかなピアノやアコースティックギターなどの素朴な叙情性に
ストリングスなどのアレンジも入った、クラシカルな美しさも覗かせる。一方では、ジャズロック&フュージョン的な、
軽やかなナンバーもあったりと、スタイルにとらわれないセンスと確かな演奏力を感じさせる。
ラストは16分の大曲で、メロディアスで優美なシンフォニックロックで締めくくる。優雅な好作品です。
ドラマティック度・・7 プログレ度・・7 軽妙度・・9 総合・・8

VA Progressivamente Story
SONYとProgressivamenteレーベルによる、イタリアンロックのオムニバス。2014年作
のっけから、レアーレ・アカデミア・ディ・ムジカの前身である、Fholksの貴重な音源でスタート、
オルガン鳴り響く牧歌的なイタリアンロックになごみつつ、BANCOとAREAのライブ音源でしゃきっと覚醒、
その後も、Il Balletto Di Bronzoのライブ音源や、Ezra Winstonの牧歌的な未発曲など、レアな音源を多数収録。
ダークアンビエントのHEXPEROSなどはやや異色だが、LPのみでしか聴けなかったSAINT JUST AGAINや
Devaeのライブ音源などもなかなか貴重だろう。70年代から現在にいたる、イタリアのプログレシーンの奥深さを
俯瞰できる全30曲を2CDにたっぷり収録。少しディープなイタリアンロックの世界を知りたいプログレ中級者や、
シングルやライブ音源までは追いかけられないという、不精なリスナーも満足させるコンピ作品です。
マニアック度・・9 貴重音源度・・9 イタリアンロックの歴史度・・9 総合・・8
Amazon.co.jpで詳細を見る


 *音楽ページトップへ